アップルの幹部たちはいつもApple TVを単なるサイドプロジェクトとして位置付けてきた。そう、ほんの少し前までは。

アップルがいよいよインターネット・ビデオに本腰を入れ始めたようだ。同社のオンラインストアでは今、ストリーミングメディア端末であるApple TV専用のセクションが設けられている。

ストアサイト上では99ドルのセットトップボックスが、関連アクセサリーやサポートページへのリンクと並んで大きく掲載されている。9to5Macの指摘によれば、Apple TVがこのように、iPhoneやiPad、iPad、Macといったアップルのメジャーな製品ラインと同列に扱われるのは初めてであり、これは非常に意義深いことなのだという。なにしろこれまでApple TVは「iPod 」項目の中にひっそりと隠されていたのだから。

Apple TVの機は熟した

Apple TVはこれまで、ニッチな業界に向けたニッチな製品だと位置づけられてきた。アップル自身でさえそのように考えていたのだ。Apple TVが初めて登場したのは2006年(iPhoneよりも先だった)であり、当時はせいぜいiTunesストアが行っているビデオ配信事業の付属物といった扱いだった。

だからといってApple TVに人気がないわけではない。この記事を書いている時点でも、米Amazonの家電製品ベストセラー第4位にランクインしているほどだ。成功の理由は、アップルがこの端末をiTunesの限られたエコシステムから解放し、NetflixやYouTube、Huluなどのサービスも視聴できるようにしたからである。最近ではHBOやESPNなどの大手放送局も参画している。

ただし、これらのセールスポイントは逆にApple TVの限界も浮き彫りにしている。Apple TVの画面には、アップルによって正式に認可されたアプリしか表示されないのだ。もしもApple TV以外にアプリをダウンロードする手段を持っていなければ、ユーザーはアップルが認可したソフトウェアや機能しか利用することができないのである。

例えばApple TVでAmazonの「Betas」を視聴したいと思った場合、ユーザーはMacかiPhone、またはiPadを経由してストリーミングするしかない。Amazonはまだ Apple TV 専用のアプリを出していないからだ。

Roku、TiVo、Dish with Hopper、Sling、Chromecastなどの動画サービスが人気を集めていることからも、最近はテレビの視聴形態にさらなる柔軟性が求められていることが窺える。今年のCES(家電見本市)で喧伝されていた内容を信じるなら、スマートTVは長い準備期間を終えていよいよ飛躍の時を迎えようとしているようだ。

次世代のTVハードウェアは、多くの消費者の心を掴むことになるだろう。このチャンスをアップルの経営陣が見逃すはずがない。

リビングルームにスマートTVを迎える準備をしておこう

今週行われたアップルの決算発表では、珍しくiPhoneブランドに若干の陰りが見られた。同社が今年、新たなヒット商品を求めているのは間違いないだろう。そして、TVデバイスに力を入れるとしたら今が絶好の機会である。

ただし、アップルは決してトレンドや流行に左右される会社ではない。マーケット分析にも興味がないようだ。アップルが気にするのは消費者のイメージである。同社には、クリエイターに絶対的に愛されているという自負がある。プラスチック丸出しの「iPhone 5C」は、実にアップルらしくなかった。誰もが欲しくなるデバイスを永遠に生み出せるわけではないかもしれないと思われてしまったことは、アップルにとって痛手だったに違いない。

それではアップルは新しくスター選手となったApple TVでどのように人々のハートを掴むつもりなのだろうか?噂では、アップルは独自の薄型TVデバイスを開発し、そこにスマートTVの機能を詰め込むつもりなのだと言われてきた。しかしそれよりも現実的で、さらにアップルの伝統にも相応しいやり方は、Apple TV専用のappストアを立ち上げることだろう。

アップルは自社製品に対する消費者の意見も気にするが、それと同じくらいアプリ開発者も大事にしている。Apple TVを開発者に対してオープンなプラットフォームにすることができれば、アップルがリビングルームを支配するのも不可能ではなくなるだろう。

開発者たちは長年Apple TV関連の開発を行うことを夢みてきた。中にはApple TVをハッキングしてiOSアプリを実行できるように改造した開発者もいるほどだ。それほどに関心を集めているのである。

そしてアップルは同時に多額の売り上げも集めている。昨年のAppストアの売上高は100億ドルに達した。今後、消費者がリビングルームに置かれた大きなスクリーンに配信されるアプリやコンテンツにもお金を払うようになれば、売り上げはさらに拡大することになるだろう。

画像提供:Julien GONG Min(Flickrより)

Adriana Lee
[原文]