■少なすぎると「残り物」の印象

「○個限定」というPOPは人をひきつけます。ですが、ただ限定感を出すだけではもはや売れない時代です。来店頻度が低い店が限定品を扱っていたら手にとってみるものの、頻繁に通う店だと、いつ行っても「限定」と謳われた何かがあるから、今買わなきゃという気が起きないわけです。現在は「お店への来店頻度×たまたま出合った商品の限定感」という2つの掛け合わせで、より限定感が生まれる状況ができていると感じています。

効果的な「限定」とはどんなものなのか、少し詳しくお話ししましょう。たとえば、営業時間の半分が過ぎた時点で、そのお店の1日の総来店人数の20分の1ぐらいの数を「限定個数」にして販売してみるのが最適です。少なすぎても「残り物」という印象を与え、かえって売れないこともあるので気をつけましょう。

また、お店の強みである「1番」……ファーストワンやオンリーワン、中でもナンバーワンを改めて提示しているお店がお客様を集めている傾向にあります。

ナンバーワンというのは何でも構いません。日本一高い山は知っていても、2番目は誰も知らない。1番にしか興味がないのだから、逆に1番だといえることがあれば必ず出すべきです。

■字が下手な人ほどいいPOPが書ける

店頭のPOPで1番効果的なのは「丁寧だけど下手な字」。「習字を習いました」というような達筆ではなく、下手でも頑張って一生懸命書いた字が、人をひきつけます。震災以降、家庭の中心である40代女性の消費行動が非常に大きく変化しました。その根本にあるのが原発の問題、食の安全が失われたことです。子どものために、より安全でより本物のものを選ぶようになった。そのような理由から、その人や物が見えるような「手書きPOP」が生きてくるのだと思います。

手書きPOPの書き方をご紹介しましょう。手書きPOPはまず市販されている筆ペンを使いましょう。どんな下手な字の人でも目立たず、かえって味が出せます。いろいろな色がありますが、1枚のPOPでは3色までにしてください。脳科学の観点からも、4色になるとどこを見てよいのかわからなくなるそうです。なお、マジックは下手さが際立つので厳禁です。

筆ペンを使うコツは、筆を傷めつけるように書くことです。習字風だと筆先だけ動かして書くのですが、傷めつけるように押し付けて筆の奥まで使って書くと「うまくはないけど味のある字」になります。

今は、イメージをする力が乏しくなっている人が多いためか、言葉だけで説明しても伝わっていないことが往々にしてあります。ですので、目に見える形にしなくてはいけません。たとえば、歴史のある古い酒蔵でおじいちゃんが1人で造っているというような情景を見せないと、限定感が伝わりません。そういう「目に見えるPOP」を作るために、最近ではフォトフレームを利用することも増えています。

たとえば手書きのPOPの横に、実際その商品が雑誌に取り上げられた記事と表紙を載せておく。取材された風景を流しておくのが最もいいのですが、大事なのは「外部から評価されたこと」ですので、とにかく取り上げられたものはうまく使うことが大切です。

かつては職人や料理人、あるいはその奥さんなどが介在して、作っている商品のことをお客様に直接伝えていました。お客様は目に見えるものしか信じません。人間関係がどんどん希薄化して接客で補えなくなった部分を、POPが代弁している──そういう時代なのです。

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船井総合研究所 今野良香
1981年、千葉県生まれ。成蹊大学卒業後、船井総合研究所にて食品製造・小売業のコンサルティングに従事。著書に『当たる手書きチラシのルール』(同文舘出版)などがある。

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(船井総合研究所 今野良香 構成=相馬留美 撮影=和田佳久)