「最近、重度の遅漏(ちろう)に悩んでいる男性が多くなっています。また、膣内で射精できない、つまり中出しできない方も増えてきているんですよ。勃起もするし、オナニーもできるけど膣内だと、どうしても出せない人。私のもとにも膣内射精障害に悩む患者さんが多くやって来ます」

こう語るのは、射精のメカニズムに詳しい、獨協医科大学越谷病院の小堀善友先生だ。

この膣内射精障害にかかる男性の半数は心因性によるものだといわれている。厳しい家庭で育てられ、性に関する情報に触れる機会が少なかった男性が「射精はいけないこと」といった間違った認識を無意識に持つようになった。付き合っている彼女もしくは奥さんに「セックスがヘタ」と言われた、など、何かしらのストレスを抱えている患者が多いのだとか。

しかし、残りの半数は、間違ったオナニーが原因だという。間違ったやり方でもって“強すぎる快感”を覚えてしまったせいで、本来のセックスで得られる快感を気持ちいいと感じられず、結果として膣内でイケなくなってしまうというのである。

では、間違ったオナニーとは、どのようなものを指すのか?

「基本的には手を使わない方法ですね。いちばん多いのは『床オナニー』です。床に男性器をこすりつけて刺激する方法で、この場合、勃起しないまま射精する人が多いです。膣内での動きは基本的にピストン運動ですが、床オナは圧迫される感覚。まったく質が違い、これに慣れてしまうと膣内では快感が得られず、射精ができなくなってしまうんです。布団や畳など、比較的に柔らかい床オナでもそれは同じ。床オナこそ、膣内射精障害の最大の敵と言っていいと思います」(小堀先生)

小堀先生によると、強く握ったり、包皮を使って刺激する方法(皮オナ)も「やってはいけないオナニー」だそうだ。

「ちなみに、膣内射精障害は海外ではほとんど報告されていません。ええ、日本特有の問題なんですよ。やっぱり、最大要因である床オナが日本独自のものだからだと思います。靴を脱ぐ文化が影響しているのかもしれませんが、日本人は床オナが大好きなんです。少年時代、畳や床の上でゴロゴロしているうちに、その気持ちよさに気づいてしまい、床オナに至っているのでしょう。実際、少年から大人になった今でも、オナニーは床オナ以外したことがない生粋(きっすい)の“床オナニスト”もいます」(小堀先生)

日本家屋の“靴を脱ぐ”文化が、まさか膣内射精障害を生んでいたとは! なにはともあれ、床オナは厳禁である。

(取材/木場隆仁)