まあ、なんとなく自分の予想があたってしまった(グループリーグ突破は可能、メダルは運否天賦)わけですが、正直これは褒められることでもなくて、優勝候補ではない日本が序盤にコンディションがよくて中盤から落ちてくるなんてことは普通に考えればわかることです。日頃サッカーの記事を、プロアマ問わずきちんと根拠を持って書いている人ならある程度予想できることだし、できなかった人は反省すべきかなと。
 
 あ、これは予想の話ではありません。韓国戦の話。結局、中2日に移動込みという凄まじくキツいコンディションを突破することができず、日本は韓国にひねられてしまいました。ただ、足が止まっていない時間帯は日本らしい運動量を生かしたサッカー、パスサッカーができていたわけで、それができなくなった時間帯と失点の時間帯は割とリンクしていました。

 つまり、この負けもある種予想できたことというか。中2日の6連戦という厳しすぎるスケジューリングでは、前からプレッシングをかけ続けるスタイルではいずれ破綻する。ゆえに最初の3試合、特に初戦は全力を注いでギアが入りきっていない相手を粉砕、勢いに乗った2戦目を奪って3戦目にある程度主力を休ませつつグループリーグ突破、そこまではあり得たわけです。だから、日本の勝ちを予想するのはそれほど難しいことではなかった。
 
 一方で、準々決勝以降でどういうコンディションになるか、どういうレギュレーションでどこでどのチームと試合をするかもわからない、ゆえに運否天賦であると。今回日本が勝ち得たもっとも大きな収穫は、残念ながらメダルではありませんでしたが、この「五輪の戦い方」ではなかったでしょうか。
 
 例えばワールドカップでは中2日なんて気が狂った日程はありえず(南アは中4日)、18人という狭い枠もありえません。この厳しすぎる日程とレギュレーションにおいて、五輪壮行試合でブーイングで送り出されるほど期待されなかった代表チームがとりえた戦略はカウンター戦術しかありえず、彼らが残した4位という成果は最大に近いものだと思います。この結果に文句をつける資格は、とりあえずほとんどの人にはないでしょう。結果に文句言ってる連中は全員インチキだと思っていいよ。
 
 ただ、内容に目を向けると「もう少し何とかならなかったか」と思わざるを得ない。やはり、そもそもなぜこのアンダー世代の日本がパスサッカーをある程度放棄せねばならなかったか、予選の選手選考からチームコンセプト含めもう少し何とかならなかったか、今回の選手選考でもサプライズで抜擢した杉本健勇の活かし方、宇佐美貴史の大不振(彼本来の力量が見えたのはほんのわずかだった)、これなら清水の大前元紀や高木俊幸、ユトレヒトの高木善朗、セビージャの指宿洋史、鹿島の大迫勇也あたりをサブにせよ入れときゃよかったんじゃないの的な批判は、まあ言えますよね。
 
 実際、サプライズで選んだ選手、あるいはサブに置いて使おうと考えた選手が結果を残せなかった以上、結果論にせよ「その選手選考は100パーセント正しくはなかった」という批判からは逃れられませんし。横浜FMの齋藤学にしてもスペイン戦ではガチガチの緊張でほとんど使い物にならず、試合に入りきれたのは決勝トーナメントぐらいからだった印象です。
 
 ただ、それらを全部ひっくるめても、やっぱり今回のチームを責める気にはなれません。関塚隆監督にせよビッグトーナメントへの経験はなかったわけで、その中で手駒を用いて必死に用兵を組み立て、スペイン・モロッコ・ホンジュラスという対戦順と相手のサッカーを分析し、「グループリーグ敗退しない」ための最良の戦略を編み上げたわけです。本大会直前の状況で、関塚さん以上のことが誰かできたとは思いません。再度書きますが、このチームは最大に近い結果を得たとおもいます。

 一方で、U19世代から、より育成に特化した人材を高い給料を支払って呼んでいれば、そもそも選手の顔ぶれも戦い方の質も違ったのではと思わざるを得ません。例えば1999年ワールドユース準優勝、2000年シドニー五輪ベスト8、2002年日韓ワールドカップベスト16は日本サッカー史上唯一「アンダー世代の強さがそのまま引き継がれた」状況が生まれましたが、この成功事例をなぜ引き継げなかったか、再びアンダー世代とトップの分断が生まれているのはなぜか、それがベストの回答なのか否かは今回のロンドン五輪の躍進とは別に検討されるべきかと思います。

 一番つまらないのは、「この程度のコスト投下でもベスト4までいけたのだから、次のチームも似たような感じでOK」となることで。実際問題として、ベスト4とメダル獲得は天地の開きがあります。メディア露出もその評価のされ方も、後世に残るか否かということも含め。「ベスト4でよかった、頑張った」という言葉は選手に対して惜しみなく送ってほしい一方、日本サッカー協会はもう少しで銀メダルもありえた状況からメダル獲得に至らなかった経緯をしっかり分析し、次世代への投資につなげて欲しいと切に願います。