不安定要素のひとつだった3バックに関しては、MF登録の加藤恒平を置いていたところに新加入の元韓国代表DFイ ガンジン(李康珍)を配することでカヴァーできるが、全体のコンセプトはそのまま残る。

ピッチで戦うのは選手たちだ。状況によっては監督の指示に背くこともあるだろう。その覚悟を持たないとこの低迷を脱することは難しいかもしれない。とはいえ、選手たちがそうしたことで悩まずに済むよう、アルディレス監督がしっかりとオーガナイズできればよいのだが……。

■奪われたあとの対応に問題がある

負けているとき、あるいはチームがうまくいっていない時期には、選手から問題点を指摘する声が上がる。当然のこととはいえ、やはり町田の状況はそうとう厳しいと言わざるをえない。

この日の1失点目は、工藤浩平がタテにすばらしいパスを一本通し、それを抜け出した宮吉が決めたシンプルなゴールだった。これについて太田は「1失点目はぼくが奪われてからの失点。考えているあいだに奪われてしまった」「(あいだを使われたことを考えれば)全体的に中に絞ってやればよかったのかもしれませんが、奪われ方がすべて(前のめりになって守備の準備ができていない状態で奪われる)だと思うので。中に人数をかける前に攻められてしまった」と反省をした。

しかしGKの修行智仁は、そのあとに町田守備陣がまったく対応できなかった、または反応が遅れたことが問題だと言う。
「ボールを奪われたことよりも、奪われたあとに対してうしろが準備していないことが問題。獲られた人どうこうより、うしろの管理が問題で。ずっと言っていることなので、選手たちも攻めているときの準備をしなければいけないことは頭ではわかっていると思うんです。でも急に奪われたときに、一瞬意識が抜けているときがある。90分通してできないと。きょうは一瞬の隙を使われた。習慣として練習から意識してやるしかないと思います」(修行)

一瞬の判断ができない、急な切り換えについていけない。ここを修正しないかぎりは、今後も、何度でもショートカウンターを喰らうのではないだろうか。

■全力で戦える環境を整える必要があるのではないか

FW平本は「ちょっときょう、ひどかったですね。特に後半は、チーム全体として」と、ばっさり。
「全体的に運動量が少ないですよね。抜け出す動きも別に…………FWしかやってはいけないというわけではないし。全体が抜け出したり、全体が守備しているんだから全体で攻撃もしないといけないし、そこの連動性がまったくないですね」(平本)

その原因は穴を開けてはいけないと思うからかと訊くと、平本は次のように答えた。
「たんに気持ちじゃないですか。気持ちが強ければ走れるし。前線が守備をするという約束もあるんだったら、もっと全体的に攻撃的にやる、という戦い方をしてもいいんじゃないかと思います」

ただでさえ勝てない試合がつづいて元気が出ず、不安になるのもわかる。それにタスクの制限が拍車をかけているのだとすれば、蹴って走ってカウンターでもなんでもいいから、まずは枷を外して全力で戦える環境を整えなければならないのではないだろうか?

後半に北井と勝又が入った時間は気迫をみなぎらせ、走りまくって1点を返したわけだから、やってやれないことはないはずだ。

町田は全力で戦うべく気持ちをひとつにするべきだ。ただ、自分が働かなければ食い扶持を失う、そうしたプロフェッショナリズムとリアリズムを持つ平本のような選手たちに、立場を賭して提言をさせるようではいけない。まとめられるのは本来、責任と同時に権利も有する監督しかいない。

京都の大木武監督は共同記者会見で「わたしがいまこうしてここにいられるのも、96年からの三年間、アルディレス監督にすばらしい指導をしていただいたおかげ」と礼を述べた。そう言われるだけの人物だと思う。であればこそ、この苦境をなんとかしてほしい。