2つの都立高校への取材ではあったが、それだけでも日本の育成現場ではまだまだ補欠が存在し、インターハイ予選の終わる5月に引退する選手が数多くいることがわかる。リーグ戦文化が浸透し、公式戦の数が増えたとはいえ、その恩恵を受けるのはピラミッドの上層部にいるエリートチームのエリート選手のみではないか。少しずつ改善の兆しは見え始めているとはいえ、一刻も早く普通レベルのチームや選手たちに真剣勝負の公式戦を提供し、彼らに生涯を通じてサッカーを楽しみ続けてもらわない限り、日本が本当の意味でのサッカー大国となることはないだろうし、スポーツやサッカーが「文化」となる日もまだまだ遠い。エリート強化に注目が集まるのは当然ではあるが、ボトムアップの環境がまだ整わない日本においては諸刃の剣になることも意識すべきだろう。


■著者プロフィール
小澤 一郎
1977年、京都市生まれ。サッカージャーナリスト。スペイン在住歴5年を経て、2010年3月に帰国。スポナビ、footballista、サッカークリニック、サッカー批評、サッカー小僧、ジュニアサッカーを応援しよう!などで執筆中。
著書に『スペインサッカーの神髄』(サッカー小僧新書)がある。また、「まぐまぐ」より、メルマガ『小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」』を配信中。