【澤村】はい。

【江夏】そんななかでこのオフには6〜7kgか? かなり体重が増えたと聞いたけれど、ただ単に増えたのか、それとも自分で意識して増やしたのか?

【澤村】意識して増やしました。

【江夏】どういう理由で?

【澤村】なんというか、外車のような“排気量の大きいエンジン”が欲しいんです。2000ccとか3000ccではなくて、5000cc、6000ccというようなデカいエンジンを自分の体に積みたかったんです。

【江夏】ふっふっふ(笑)。そのためには、ただ体重を増やすだけじゃダメだよな。しっかり体を絞りつつ増やさんと。

【澤村】はい。筋力トレーニングもやりましたし、もちろん走り込みも、腹筋、背筋もやりました。例えば「ツーアウト二塁、打たれたら負け」というような場面で、それが8回でも9回でも、相手を圧倒できるようなボールを投げたいという思いがあるんです。

【江夏】自分で持った目的に向かって、まっしぐらに進んでいくのはとてもいいことだと思う。そこで聞きたいのは、ピッチャーには投球内容を追求するタイプと、とにかく勝ち星という結果を求めるタイプがいると思うけれど、あなたはどっちだろう? 体重を増やすという決断も、そのあたりに関係してくるよね。

【澤村】周りは結果で評価すると思いますけど、僕のなかでは「どれだけ試合をつくったか」ですね。やはりイニング数を多く投げるということは、それだけ監督さんに任せられている証だと思うので、そこは重視したいです。

【江夏】とすると、去年の200イニングという数字にも満足していない?

【澤村】正直、去年は200イニングいけると思っていなくて、気がついたら達成していました。今年は200を超えたいと思います。1年目でできたことは2年目、3年目も当然できないと。

【江夏】そうだよな。イニング数も勝ち星も、1年目より増やしたいのは当然だろう。もちろん結果は終わってみないとわからないけれど、自分で体重を増やしたりしている工夫が本当にプラスになると思う?

【澤村】プラスになると思います。

【江夏】よっしゃ。じゃあ、少し質問を変えるけど、あなたが自分で自分のピッチングを表現するとしたら“速球派”なのか、それとも“技巧派”なのか。

【澤村】どちらかというと、自分は速球派です。

【江夏】ある関係者は「澤村はスライダーピッチャーだ」と言っていたけど(笑)。

【澤村】はい……。去年のシーズン序盤はすごくスライダーが多かったんです。でも、後半になったらフォークのほうがずっと多くなりました。ツーアウト満塁の場面でも、阿部(慎之助)さんから要求されたのはフォークだったので、こっちのほうが信頼されているボールなのかなと思ってました。

【江夏】アウトローの真っすぐは?

【澤村】アウトローの真っすぐも、そういうボールだと思います。

【江夏】それとフォーク、両方があるから三振を取れるわけだからね。あなたは三振というものに対するこだわりはある?

【澤村】取りたいですね。取れるピッチャーでありたいです。

【江夏】去年は200イニングで174個か。1イニングに1個のペースにはちょっと足らないわな。あなたの力からすれば、200個は取れたと思う。大学時代はかなり取っていたんだろ?

【澤村】はい、15個以上取った試合もありましたし、平均でもイニング数は超えていました。

【江夏】そういう意味では、あなたは三振の魅力を十分に経験しているわけだ。だからこそ、三振を取れるピッチャーでいてもらいたいよね。「ここは三振しかない」という場面で取る三振の価値も、よく理解していると思うから。