なお、Jリーグでは、J2旋風が吹き荒れたと言いますか、J1クラブが情けなかったと言いますか、柏レイソルがかつてのノッティンガム・フォレストやカイザースラウテルンが成し遂げた昇格初年度で優勝という盛挙を成し遂げたばかりでなく、天皇杯でもJ2同士が決勝戦で相見えるという珍しい年となりました。

しかし、冷静に昨年のJリーグで起こった出来事を分析しますと、J2よりは遥かに運営費を使える立場にあるJ1クラブが情けなかったと申しましょうか、費用対効果の悪いクラブが相変わらず多いことに気が付くのです。その最たる例が浦和レッズでしょうが、Jリーグ随一の収入を誇りながら、ここ数年の体たらくは目を覆うばかりでした。結局、フロントに確固たるヴィジョンがなかったからですが、この度やっと真に優秀な指揮官に恵まれましたから、今年は間違いなく優勝争いを繰り広げるはずです。日本人監督で行くといったフロントの優柔不断ぶりを攻めるサポーターもいるようですが、来季終了時点でそんな雑音は何処かに消し飛んでしまっているに違いありません。そして思い切って元広島のペトロビッチ監督に声を掛けたフロントの人物は、溜飲を下げられることでしょう。

一方、柏レイソルの快挙を讃える声が相次ぐ中で、私の本音はそれ程騒ぎ立てるものではないというものです。何故ならば、そもそも柏レイソルは費用対効果という点でもクラブそのもののポテンシャルからしても、J2に降格してはいけないチームであったからです。J2降格年度の運営費はJ1全体の中程に位置していたわけですから、落とす方がいけないのであって、J2優勝も当たり前のことです。もっと申し上げると、柏レイソルは過去にもJ2降格を経験していますが、その際の費用対効果は更に酷いものでした。そんなフロントのマネージメントの悪さが私の根底に刷り込まれている為、厳しい発言となっているとは存じますが、昨季の外国籍選手選びとその費用対効果は完璧かつ秀逸だったことは認めなければならないでしょう。また、前々回J2に降格したフロントのメンバーは一掃されているでしょうし、これからが柏レイソル首脳陣の真価が問われる大事な時期となるのではないでしょうか。

それは今季J2優勝と天皇杯優勝を果たしたFC東京にも言えることで、そもそも2010年にJ2に落ちてはいけないクラブであったと指摘せねばなりません。マスコミは騒ぎ立てませんでしたが、降格年の営業収益はJ1の中で浦和、鹿島、名古屋に次いで何と4位、そして運営費でも9位というものですから、これで落とす方がどうかしています。従って、昨季のJ2優勝は当然の責務ですし、天皇杯優勝も本物のジャイアントキリングと呼ぶには程遠いものと言わざるを得ません。FC東京も今年が真価を問われる1年となるでしょう。

なお、来るシーズンに向けて鹿島アントラーズとガンバ大阪が、揃って常勝軍団を支えてきた大物監督を退団させることになりました。果たしてこの2大クラブが上位争いを堅持出来るのかを見守りたいと存じますが、ガンバ大阪に関して私は大いにその行く末を案じております。

思い出して頂きたいのですが、ガンバ大阪というJリーグ開幕以来、タイトルや優勝争いに縁のなかった平凡なクラブを攻撃的スタイルで常勝軍団に変貌させたのは、言うまでもなく西野監督その人でした。21世紀に入って西野監督を追い出したレイソルがその後凋落の一途を辿り、その西野監督を受け入れたガンバ大阪が、下降するレイソルを尻目に常勝軍団へと変身していったわけですが、当時はレイソルのフロントの無策に憤ったものです。しかし、今度はガンバ大阪のフロントに対し、同じ想いを抱く次第です。