止まらない負の連鎖。派遣も、日雇い労働も、闇の求職さえ、雇われる側は搾取されてばかり。何もうまくいかず、生活にも苦しむ青年は一発逆転を狙ったはずだったのだが…。
 2005年に『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞した薬丸岳さんの新作『ハードラック』(薬丸岳/著、徳間書店/刊)は、サスペンスミステリ小説だ。

 「仲間求む。今の生活にもがきくるしんでいる人たち。一発逆転を狙って一緒に大きなことやりませんか。」――派遣切りや詐欺に遭い、闇の求職の仕事にまで手を出してしまったネットカフェ難民の主人公・相沢仁は、人生をやり直すために闇の掲示板に仲間を募り、ウォッカ、バーボン、ラム、テキーラの4人と出会う。
 彼らはバーボンの提案により、軽井沢の金持ちの屋敷に押し入るが、仁は部屋を物色中に何者かに頭を殴られて気を失ってしまう。そして、からくもその場から逃げるも、屋敷は全焼し、3人の他殺体が発見されたことを報道で知る。何者かに嵌められて殺人放火犯になってしまった仁は、警察に追われながら自分を嵌めた真犯人を見つけるため、まずはウォッカ、バーボン、ラム、テキーラの行方を探すのだった。
 そして、仁、刑事の勝瀬信一、強盗に押し入った仲間たちの視点から物語は進む。
 このまま警察に捕まったら死刑になってしまう恐怖、徐々に明らかになっていく犯人の正体とは…?

 スピーディーに展開する物語の中には常に緊張感が走り、次へ次へとページをめくっていってしまうだろう。仁たちの起こした強盗の裏で一体何が起きていたのか、真実はどこにあるのか。スリリングな物語の世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部)



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