マイボール時は圧倒的な力を発揮するが、相手にボールを奪われると、途端にアワアワするのがかつてのバルサだった。相手ボールになると、バルサは決して強くないチームに見えた。

その傾向はもはやない。05〜06シーズンの優勝を境に、パニックを起こす回数は飛躍的に減った。マンU最大の誤算だと思う。マンUボールの時、もう少しアタフタするだろうと読んでいたが、実際はそうではなかった。マンUが前にボールを運べなかったのは、バルサのディフェンス能力に原因がある。組織的かつ効率的。「穴」は思いのほか存在しなかった。バルサの守備はザル、それこそがマンUの狙い目。そう思っていた人が多数派であったに違いない。

もっとも、バルサが勝つか、マンUが勝つか、などという話は、所詮は他人の喧嘩。我々が心配すべきは、本来まったく別の点にある。このチャンピオンズリーグファイナルをテレビで生観戦した人は、世界で3億人以上いたといわれている。だが、膨大な数を耳にすると、逆に不安に襲われる。いったい日本人はどれほど見たのか。紛れもなく、ワールドカップ決勝のレベルを超える世界最高峰の戦いだ。ファン必見のゲーム。サッカーの普及発展のためにも、一人でも多くの人に見てもらいたい一戦になるが、時差の問題はあるにせよ、やはり少なすぎると僕は思う。地上波で放送したのはフジテレビ。良くやっている感は伝わってくるが、唐突感はぬぐえない。認知度は決して高くない。これほどのイベントなのだから、決勝以外の試合でも、決勝並みに力を入れて欲しいというのが素直な感想。

スカパー!も頑張っているようだが、いかんせん加入者が少ない。視聴者は狭いサークルの中にいる感じだ。大衆性は非常に低い。10年前の方が断然勝っていたような気がする。海外と比較しても、日本の熱はどう見ても低い。中国、香港、タイ、ベトナム、韓国等々の後塵を拝している。これって実は大層な問題だと思う。ワールドカップでベスト8を狙うには、ほど遠い熱と言わざるを得ない。チャンピオンズリーグは、もっと身近でポピュラーなイベントでなければいけない。僕は改めてそう思うのだ。

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