お役所用語の大半は基本的に「防衛」のための予防線である。組織防衛という意味もあるし、発言者自身が責任を取らなくてもいいように予防するという意味もある。
しかし、二重三重に予防線を張っているうちに、日本語として意味をなさないレベルの文章になることが多い。



たとえば、公道の横断歩道が少なくて事故の危険があるとお役所に訴えた場合、次のような答えが返ってくる。

「申し出の趣旨については、予算等を勘案の上、所要の措置を取る予定であると聞いている」

一見、立派な答弁のようであるが、この真意は「とりあえず様子を見ましょう」ということである。

この答弁は、類義語や難解語を多用して、巧妙に話をあいまいにしている例である。

☆趣旨=「物事の目的やねらい。また、文章などで伝えようとしている、おおよその内容。」
☆所要 =「必要だと思われること。(必要だとは言っていない)」
☆予定 =「未定である」
☆聞いている=「私が決めるわけではない」
☆勘案=「いろいろと考え合わせている」

以上で直訳すると、「申し出のおおよその内容はわかったのですが、先立つ予算のことも色々考えて、本当に必要ならやるかもしれません。ちなみに決めるのは私ではありません」ということなのである。

お役所用語は難解だと言われるが、実際のところは、あちこちに防衛線を張ってなるべく何事も起きないように願っているのだ。
しかし、こういった答弁をしなければならない背景には、「一つ前例を認めるとなし崩しに全部の陳情を認めなければならない」という危機感があるのだ。
「公益」と「住民エゴ」の境界線は微妙である。それを見極めるのも役人の才能の一つである。

(編集部 石桁寛二)

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