今、中国人や台湾、香港人に人気沸騰中のある東京都内の海鮮料理店。ツアー客は多いときで1日20団体ともなる。営業部長Aさんが、台湾の旅行会社に毎日のように電話をかけ、店をアピールした猛攻撃の賜物だ。

 Aさんは、観光客を連れてくるエージェントや添乗員、あるいは日中間の情報をつなぐキーマンとのつきあいを大事にしている。「彼らの名前を覚え、好みを知り、そしていつもそれぞれに対しての“特別扱い”を忘れない」とAさん。なかなか、中国人を相手にこれができる日本人は少ない。

 中国ビジネスにおいては「あなたは特別」という気持ちを表現しなければならないシーンが多い。だが、「サラリーマン型」の日本人ビジネスマンにとってはこれがまた難しい。質素倹約と公平平等がDNAに深く刻み込まれた日本人にとって、中国人の喜びのツボを探し当てることは至難。だから接待の幹事役は実務以上の重荷だ。

 けれども、「中国人は、店のレベルやオーダーする料理の値段で、相手からどれくらい重視されているか判断する」(日本滞在経験の長い中国人)と言われるくらいに、ここぞの一発は外せない。誰を接待するかにもよるが、日本の企業においては、合理的な理由がない限り予算を確保するのも困難、また高額な接待をすることそのものがモラルハザードと受け止められることが多い。これらは中国の現地企業が本社の理解を得られないと嘆く点の1つでもある。

 接待では抑えておきたいイロハがいくつかある。「日本料理か、有名な中華料理店なら名の通っている有名店がよい」(同)ということだ。日本人好みの隠れ家的店よりも、人が多くてにぎやかな店を好む。影響力のある政府の役人クラスと常時接点を保つコンサルタントの某氏は「ホテルなど静かな環境を選ぶ。とりわけ内装のゴージャスなところを選ぶのがポイント」と話す。そして、細かい点だが、お茶(すべての注文の前にお茶の注文が先行する)はできるだけ高級茶を選び、注文する料理のバランスを考え、十分な量があるかどうか(満腹状態でも皿を空にしない)に配慮し、酒を飲む人には、常に酒を勧めるようにするというのが、成功裏に収めるコツと言えるだろう。

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