情熱的なタケシ(28)
「それにしても、似た本が多い気がしますねぇ。ビジネス書なんか、『○○の戦略』『○○の成功法則』といった似たタイトルが多いわよねぇ。このまえ話していた、「血液型の本」もヒットにあやかろうと類似本ラッシュよねぇ…」
あおいの素朴なつぶやきは、書店に頻繁に足を運ぶタケシにも新鮮にうつる。
「ぶっちゃけた話、『本を出す』ということよりはるかに過剰に、『売る』ということに躍起になっている感じがするよね。それが出版業界全体の不況を加速させているんだろうなぁ」
タケシも思わず熱くなる。
「そうね。前回、話したように『B型自分の説明書』は、おそらく自費出版だったからこそ世の中に出た。冷め切った大手出版社に原稿を持ち込んだとしても、出版には至らなかったかも知れない、って私の編集者も言っていたわ。
そしてヒットも、大型書店の大量陳列じゃなくて、地方書店の数冊から火がついた。それって、決して計算じゃないのよね。
私は、本を出したいっていう著者ひとりひとりの想い、書店員ひとりひとりの想いこそが出版界を変えていくって思うんだ。
疲弊しきって、自転車操業化していた出版不況の中で、自然治癒的に「出版」が正しい形を取り戻していく現象なのかもしれない、ってね」
過熱気味の聡美はついつい大袈裟な理想論になりがちだが、普段のクールなイメージとのギャップもあり、否応なしに人を惹き付ける。
「だから、聡美先輩も自費出版を選んだ…? でも、この前、『出版しようなんて思ってもみなかった』って言っていたような…」
あおいは、熱弁が一段落したかに見えた聡美に、恐る恐る聞いてみた。
「そうなの。
出版なんて考えてもいなかった。
そんな、わたしが本を出した理由、それはね…」
聡美がタケシとあおいを見やりニヤリとした。その理由とは…!?
(第3話につづく)
・文芸社ビジュアルアート コンテスト一覧
・「作品応募」〜あなたの作品を本にします〜
・「血液型の本」が流行る理由【わたしが本を出した理由】第1話
・自費出版こそがヒットを生む理由【わたしが本を出した理由】第2話
・日本でブログが世界一書かれる理由【わたしが本を出した理由】第3話
・あなたが本を出さない理由【わたしが本を出した理由】第4話
・【わたしが本を出した理由】記事一覧ページ
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