この青森編は「日本全県味巡り」という企画で、山岡と海原が闘う「究極のメニュー VS 至高のメニュー」対決なのですが、はっきり言って盛り上がりどころは皆無。これではせっかく協力してくれた青森の人達も出演損でしょう。面白い漫画にするための脚本的な演出が全く施されていないので、作画担当の花咲アキラ氏としては、これではどうしようもありません。せっかくの記念すべき100巻目がこれとは悲しすぎます。

青森だったら、基地問題とか核施設とか農村の後継者不足とか、突っ込めるネタはいくらでもあると思うんですが。この100巻だけを読むと、もう美味しんぼは終了するしかないような気がしてきます。

心配になって最新のスピリッツを確認したところ、「食の安全」というシリーズで食品添加物ネタをやっていたので、ちょっと安心。食品添加物の実像と効果を解説しながら、その弊害を語る内容は、なかなか読み応えがあっていい感じです。やはりこうでなくては『美味しんぼ』じゃないですよね。

『美味しんぼ』は、作品内で語られる主張が左翼的だとか、反日思想のフレーバーがキツいとか、いろいろ批判されることも多いのですが、漫画は面白ければ基本はOKなので、これからも攻めの姿勢を続けていただきたいものです。まあ反日的とはいっても『はだしのゲン』に比べたらまだマシなので、妙な思想を入れようとせずに、エンターテインメントを追求するのが吉だと思います。

■100巻オーバーの『こち亀』』『ゴルゴ13』
ちなみに『美味しんぼ』同様、単行本が100巻を突破している『こちら葛飾区亀有公園前派出所(以下『こち亀』)』『ゴルゴ13』でも1巻との比較をしてみましたが、両作品は共に基本的な路線が変わっていないので、それほど大きなキャラ変化はありません。
長ドスを構えた両さんが最高に男前。ヤクザの殴り込み的なイメージは東映任侠映画の影響か? 巻末コメントは漫画家の小林よしのり氏。100巻はタイトルが金箔押しでお金かかってます。巻末コメントはデビューが『こち亀』開始年と同じという作家の村上龍氏。写真が若い!

『こち亀』は、1976年(昭和51年)連載開始の作品だけに、1巻を今読むと笑いのセンスは微妙です。それでもずっと独身で、己の欲望に忠実という両さんのスタンスは変わっていません。毎回のように拳銃で実弾を撃ちまくる1巻の両さんも、秋葉原でゲームソフトの改造ハードを購入する100巻の両さんも、間違いなく"両津勘吉"です。

1968年(昭和43年)連載開始の『ゴルゴ13』も、超一流のスナイパーという設定はずっと同じです。1巻のゴルゴは独り言が多く、仕事内容も結構荒っぽいところがありますが、これは「若さ」と見れば微笑ましく思えてきます。100巻のゴルゴは寡黙で貫禄ありまくり。経験を積んでよりプロフェッショナル化したという感じです。

『こち亀』も『ゴルゴ13』も1巻よりも100巻の方が、時代の空気を取り込んで明らかに面白くなっているという事実は重要です。『美味しんぼ』が今後どういう展開をみせていくかは分かりませんが、読者が求めているストーリーとは何かを『こち亀』や『ゴルゴ13』から学ぶことは多いような気がしてなりません。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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