■劇的なドラマも生まれた熱戦
生観戦で印象的だったのが、『VF5』で無冠の帝王と言われたトッププレイヤー「ちび太」が大将戦で大逆転を見せて、チームを優勝に導いた決勝戦でした。会場は全盛期のPRIDEのような大盛り上がりで、PRIDE GPの決勝戦と比較しても遜色なかったように思います。これは、格ゲー好きの濃い観客が集まっていたことと、「ちび太=大一番で勝てない」というイメージが、長年に渡って浸透していたという"タメ"が大きく影響していたからと思われますが、それにしてもフィニッシュ時の会場の大爆発はもの凄いものがありました。プレイヤー自身にドラマがある場合以外は、純粋にゲーム内容に注目することになります。対戦時の攻防を真に理解するには、各タイトルのシステムを把握する必要がありますが、これは実際にゲームをやり込まないと身につきません。単に1人用プレイでクリアするだけではなく、対人戦で勝負を争うくらいにならないと理解は難しいのです。
一応試合中には実況&解説によるフォローが入るのですが、画面内の激しい動きに言葉を合わせるのは至難の業。実況・解説担当者の知識やコメント力も、人によってかなり開きがあったので、全体的には不満が残りました。観客が真に理解できるタイトルは限られていますので、今後は各タイトルの概要解説を映像で流すなどの配慮をしていただきたいものです。
その点『ストIII』は、攻防が見た目でわかりやすいゲームなので、やり込んでない自分でも相当に面白かったです(準決勝とかは神レベル)。この「観戦だけでも面白い」という部分は、新規プレイヤーを取り込むのにも重要なキーワード。ゲームメーカー各社の方々は、今後のソフト開発に活かしていただきたいと願う次第です。
大会3日目はライブ配信で観戦。全試合の模様を通して見ていたのですが、そこにはいろいろな工夫がされていました。試合の映像が流れるだけかと思いきや、出場選手や主催者側のインタビューなど、TVバラエティみたいな仕掛けもあって意外に面白かったです。インタビューを受ける選手達のノリのよさは、選手達が『闘劇』というお祭りを心底楽しんでいる証拠にも見えました。特に関西人選手の「スキあらば笑いを取りに行く」貪欲な姿勢には脱帽(ほとんど病気)。
選手にとっても、地方で応援している仲間が観ているというのは、心の支えになっていた模様です。ライブ配信は時々映像が途切れたりもしたのですが、後半ビットレートが下がってからは安定していたので、モニタの前できっと応援してくれていたことでしょう。
初日終了後の会場「ディファ有明」の外観。この日は朝10時の開会式から始まって、終わったのが20時過ぎ。夏でも外は真っ暗であります。
■広告モデルとしての可能性もアリ?
考えれば、あのライブ配信を観ていた人達は、ほぼ間違いなく全員が格ゲー好きだったはずです。ならばそんな視聴者の興味を引くCM等を流せば、スポンサーが広告費という名の運営資金を出してくれる可能性が高いと思うのですが、どうでしょうか。そういえば初日の会場では、スポンサー企業のバンダイナムコのゲームタイトル映像が、大型スクリーンでバンバン流れていました(いきなりアイドルマスターの映像が流れた時は、あまりの場違いっぷりに会場は微妙な空気に……。なんか悲しい)。あれをライブ配信に流用するだけで広告効果は何倍にも膨れあがるはずなのですが。リアルなライブだけでは限界がある『闘劇』も、ライブ配信という手段を活用すれば、今まで見たこともない明るい未来が見えてくる予感がします。運営資金が多くなれば、それだけイベントでできることも増えるはずなので、支えてくれるファンのためにも大人の知恵を振り絞っていただきたいものであります。
余談になりますが、私の場合、観客として特に楽しめたタイトルは『VF5』と『鉄拳5DR』でした。絶妙な避けとか、マニアックな空中コンボとか、起き攻めのフェイントとか、熱い攻防が見えたのですが、知らない人には単に地味な行動にしか見えない場面も多かった気もしてます(特に『VF5』)。ちなみにプレイヤーの多い『鉄拳5DR』は、観客の盛り上がりが最初から全然違ってました。プレイヤー人口の違いがここまで如実に表れるものなのかと、驚いたり哀しくなったり(※1)。
(※1)プレイヤー人口の違い:最近の『VF5』の過疎っぷり(都内)は相当深刻。盛り上がっているのは一部のゲーセンだけで、私の知っている範囲ではセガ直営限定。これは『VF5』が1プレイに対して、課金30円+消費税をセガに納入しなければならず、プレイ料金を100円から下げられないことが大きな原因と言われている(仮に1プレイ50円にすると店の売り上げは20円以下……)。セガはもっとガンガレ。
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独女通信 | 拝啓、イエ男くん
レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。
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