広いグラウンドが三つに分けられる。両ゴール前では4人のDFと3人のFW的選手がグループを作り、DFがビルドアップするのに対して守備をするFWというトレーニング。中央では中盤の選手がサイドチェンジを意識した攻守のトレーニングが行われた。グループわけは以下の通り。

1 DF中田、水本、青山、駒野。 FW高原、佐藤、播戸。
2 DF橋本、中澤、坪井、今野。 FW巻、矢野、中村(俊)。
3 A/遠藤、鈴木、中村(憲)、阿部、本田。B/山岸、稲本、藤本、家長、水野。フリーマンとして羽生。

 ここで目を引いたのは、中村(俊)がFWと共に前線からの守備のトレーニングに参加した点。本来のMFでのプレーではないことが報道陣の注目を集めた。

 代表合流直前の26日、スコットランドカップ決勝戦で右足首を捻挫し、昨日の6月2日にチーム練習に合流。練習試合では得点となるプレースキックを蹴るなど、精度の高いパスを蹴る場面も多かった中村だが、そのプレーには迷いも感じられたのも事実。しかし、大学生相手に果敢に攻める若手選手とのバランスを取る意識から、思いきりのいいプレーが減ったとも考えられる。この日の練習でも慎重なプレーが目に付いた。

「矢野や巻とは一緒にプレーした時間も短いので、こうやって一緒に練習する中でいろいろと特徴を知ることができるから」と練習を振り返ったが、MFのグループでトレーニングをしたい気持ちは当然あったに違いない。気になるのは中村(俊)のプレーに元気がないことばかりではない。オシム監督の中村に対する発言だ。

 6月1日の試合後も中村に対する質問に対して「中村選手はスター選手ですから、出ると予告をすれば観客15000人ほど増えるでしょうか。そうであれば出す価値はあるかもしれません」と語っている。この日も「中村が100%でプレーできないのであれば、試合には使わない。もしそうなったら、皆さん(報道陣)の要望に応じて、試合前に写真を撮る時間を作ってもいい。でも彼はフォトモデルではないから、ピッチでプレーできることを望んでいるが……」と話した。チーム内にスター選手を作ることを嫌う監督だけに、報道陣をけん制した発言だったのだろうが、シニカルな指揮官のコメントが翌日の新聞記事を飾り、当事者の意向とは関係ないところで、「中村俊輔」に関する報道は大きなものとなる。

 オシム監督の言葉は当然、中村自身にも届く。監督と選手とに信頼関係が築かれているのであれば、選手も気には止めないだろうが、3月に続きまだ合宿は2度目。中村が指揮官の言葉に過敏になってしまう可能性も高い。非難されていると感じてしまうかもしれない。