■無限に広がるインターネット上のコンテンツ

X-Series登場の背景には、海外では携帯電話でのコンテンツ利用がなかなか進まないことがある。携帯電話会社やプロバイダーが多種多様なコンテンツを提供しようにも、魅力的なコンテンツが無ければ利用者を増やすことは難しい。また、PCとインターネットの普及により、多くの情報が無料で利用できるようになってきている。携帯電話会社が自らコンテンツを発信しなくとも、すでに全世界レベルで無限のコンテンツが無償で提供されている時代なのだ。

こうした背景もあり、最近ではGoogleやYahooなどのネット企業と携帯電話会社が提携サービスを各国で開始しているが、X-Seriesはさらにネット上のサービスを踏み込んで利用できる点で革新的なものと言えるだろう。

携帯電話会社は日々増加するネット上の情報やコンテンツを自らアップデートする必要は無く、利用者に「入口」を用意すればあとはインターネットの世界が最新の「内容」「情報」を「勝手に」日々アップデートしてくれるわけだ。

もちろん携帯電話専用のコンテンツは閲覧性や操作性に優れている。しかしX-Seriesの各サービスはPC向けのコンテンツをシームレスに利用できるというメリットがある。日本でもフルブラウザを搭載した端末が増えているが、これはまさにインターネット上の資産が豊富で有用であることを物語っているといえるだろう。

■インターネットと携帯電話の融合=モバイルインターネットの時代がはじまる

各国でサービスがはじまっているモバイルブロードバンドは、ノートPCやスマートフォンなどを利用してPCの延長感覚でインターネットへのアクセスが可能になる。しかし利用には若干のスキルが必要であり、中級〜上級レベル向けのサービスと言えるだろう。

一方X-Seriesのように、携帯電話に搭載されたアプリケーションから利用できるサービスであれば利用の敷居は低い。このためPCとシームレスなコンテンツを武器にするX-Seriesと同様のサービスが、今後各国の携帯電話会社から開始され一気に普及する可能性もある。

携帯電話上からの各種インターネットサービス/コンテンツの利用はモバイルインターネットと呼ばれるようになっているが、X-Seriesの成功の可否は海外でのモバイルインターネットの普及の試金石となるかもしれない。なお3は各国でSling Box(ハードウェア)の取り扱い販売を開始し、X-Seriesのサービス加入で割引販売を開始している。将来は携帯電話会社の店頭でPCが販売され、携帯電話とサービスのセットで割引販売、といった新しい販売モデルが登場する可能性もあるだろう。

インターネット/PCの世界と携帯電話の融合はすでにメーカーやネット企業レベルでもはじまっている。有名なものはGoogleのGmail Mobile(MIDP版)だろう。すでにGmailはMobile版として携帯電話のWAPブラウザから利用できるサービスが登場しているが、JavaアプリケーションとなったMIDP版はGmail専用アプリであり、携帯電話にインストールして利用できる。

インターフェースは携帯電話用に利用しやすくなっており、たとえば数字キーでメールの削除などの操作もできる。また動作も軽快だ。携帯電話内蔵のメールクライアントと比較すると、GmailであればPCと全く同じアカウントを利用し、しかも自分のGmailサーバー上の全データにもアクセスできるためメリットは大きい。自宅/会社と外出先ですべての情報をシームレスに利用できるためわざわざ携帯電話専用のメールアドレスを利用する必要性も無くなってしまうのだ。海外では利用者が多いが、これはもちろんパケットの完全定額の普及によるものも大きい。

携帯電話から直接利用できるGmail Mobile(MIDP版)
Nokiaは写真共有サービスFlickrの連携アプリケーションをNseriesなどマルチメディアに特化した端末に搭載している。Flickrでは携帯電話から撮影した写真をメールに添付送信することで写真のアップロードを可能にしているが、Flickr機能内蔵のNokia端末であれば、携帯電話で写真を撮影した後、メニュー項目からFlickrへのアップロードを選択すると即座に写真が自分のFlickrアカウントにアップロードされるのだ。

撮影とFlickrの間に別の操作は不要であり、まさにインターネットサービスと携帯電話が融合したものになっていると言えるだろう。Nokiaは今後の新製品でYouTubeへの対応もアナウンスしており、海外ではハードウェアメーカーも自らがモバイルインターネットの世界の実現に動きだしているのだ。

この他にも携帯電話用の着メロやゲーム、壁紙の購入などをPCから行えるなど、携帯電話向けのコンテンツ配信をPCから利用できるサービスも各国で増えている。携帯電話は今後閉じた世界からオープンな世界を取り込んだものへ進化が進み、この動きは全世界的な流れとなるだろう。

韓国では携帯電話ショップが無料でインターネットサービスを提供しているところも多い。自分のノートPCから携帯電話会社のWEBサイトにアクセスし、音楽や画像を購入して自分の携帯電話へダウンロードすることも可能だ


■これもオススメ!海外携帯コラム
SIMロック販売の真実 - こんなに違う海外と日本の実情
モバイルブロードバンド天国へ!海外で進む高速サービスにみる日本との格差
恩恵をうけられない日本ユーザー - 海外とのBluetooth普及格差


山根康宏
香港在住の海外携帯電話マニア&研究家
Copyright 2007 livedoor. All rights reserved.