[画像] ダイエー、イトーヨーカ堂…日本の小売りを支えた都市型総合スーパーが衰退した理由

 ダイエー、イトーヨーカ堂など、かつて日本の小売りを支えた都市型総合スーパー(GMS)の衰退が著しい。

イトーヨーカドーは生き残れるのか…8年で800億円超の赤字、店舗数ついに100を切ることに

 25年以上も売上高日本一の座を維持していたダイエーは2013年にイオンの子会社となり、一部店舗を除いて「ダイエー」の屋号が外された。サティ・ビブレを展開するマイカルも膨らむ有利子負債に追われ、イオン傘下に入って消滅。北海道・東北地域からの撤退を決定しているヨーカドーも、コンビニ事業に注力したいセブン&アイHDが年内に売却する方針だ。

 業績的には2000年以降の動きが目立つが、実は1990年代から都市型GMSの綻びが見えていた。ダイエーの場合、98年まで新規出店やM&Aを継続していたものの、90年代にはすでに面積当たりの売上高が減少し続けていた。無理な出店が後の傷口を広げた形だ。

 都市型GMSが衰退した理由はひとえに「服が売れなくなったため」だ。店舗の1階に食品スーパー、2階以上に衣料品・日用品売り場を構えるGMSのビジネスモデルが崩壊した。

 経産省によると、アパレル関連の市場規模は91年の15.3兆円から、2000年には12兆円を下回り、19年は11兆円となった。直近の4年間ではコロナ禍の影響でさらに縮小し、8兆円台を推移している。

 ヨーカドーの衣料品売上高もピーク時の96年2月期の4568億円から、18年度には1536億円と3分の1にまで激減した。

「90年代以降、アパレル業界は競争が激化し、製造拠点の海外移転や物流の効率化で製品単価は大きく低下しました。ファーストリテイリングのユニクロが代表的ですが、製造から店舗まで一気通貫で管理するSPA(製造小売業)は質の良い商品を安く提供することに成功し、市場規模の縮小をもたらしました」(小売り業界に詳しい大学教授)

■コストコ、ドンキが急成長

 縮小する市場で伸び続けたのがユニクロやしまむらなどの専門店ブランドだ。「バブル期以降、市場規模は縮小したが服の供給量はむしろ増えた」とSPA関係者は話す。価格とデザイン性で優れるSPAの前に、GMSのアパレルは淘汰されていった。

 さらにこの間、イオンが郊外で積極的に出店してきた。テナントに専門店が入居するモールはレジャー性にも優れ、GMSに代わる新たな消費の場になった。

 そんなイオンも地方部の人口減により、今年度(24年度)は26年ぶりの新規出店ゼロとなる見込みだ。建築費の高騰もあり採算に見合う出店ができなくなっている。古くなった旧店舗を取り壊し、規模を縮小して再出店する“ダウングレード”も行っている。

 イオンの成長が止まる一方、コストコやドン・キホーテといった「郊外型GMS」が着実に勢力を伸ばしている。両者は独自性のある商品や、圧縮陳列の面白さで消費者を引き寄せている。現在35店舗のコストコは60店舗を目指す。実現すれば年間売上高1兆円規模になる。

 都市型GMSは衰退し、新たに郊外型GMSの時代が到来しつつあるようだ。

(山口伸/ライター)