[画像] 「発砲スチロールを食べるミールワーム」がアフリカで新たに発見される、プラスチック汚染を食い止める役に立つ可能性も



プラスチック汚染が世界的な問題となる中で、プラスチックを消化・分解する能力を持つ微生物や昆虫に注目が集まっています。新たに、ケニアのナイロビにあるInternational Centre of Insect Physiology and Ecology(ICIPE:国際昆虫生理生態学センター)の研究チームが、アフリカ原産の甲虫・ガイマイゴミムシダマシ(Alphitobius diaperinus)の幼虫であるレッサーミールワーム(lesser mealworm)がプラスチックを食べることを発見しました。

Mitogenomic profiling and gut microbial analysis of the newly identified polystyrene-consuming lesser mealworm in Kenya | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-024-72201-9



Can the mealworm be the answer to Africa’s plastic waste problem? | icipe - International Centre of Insect Physiology and Ecology

https://www.icipe.org/news/can-mealworm-be-answer-africa%E2%80%99s-plastic-waste-problem

Plastic-eating insect discovered in Kenya

https://theconversation.com/plastic-eating-insect-discovered-in-kenya-242787

Plastic-eating mealworms native to Africa discovered | Live Science

https://www.livescience.com/animals/insects/plastic-eating-mealworms-native-to-africa-discovered

世界中では年間4億6000万トンものプラスチックが生産されていますが、リサイクルされるのは全体の14〜18%にとどまっており、プラスチック汚染が環境汚染や人間の健康にリスクを及ぼしています。アフリカ大陸はプラスチックの生産量こそ世界全体の5%に過ぎませんが、リサイクル体制が不足しているため、プラスチック汚染が深刻な地域だとのこと。

そこでICIPEの研究チームは、アフリカ原産のレッサーミールワームが主要なプラスチックの一種であるポリスチレンを分解する能力について研究しました。ポリスチレンは一般に発泡スチロールの形態で知られており、食品や電子機器の包装などに広く用いられています。

レッサーミールワームの成虫であるガイマイゴミムシダマシはアフリカ原産ですが、記事作成時点ではほぼ世界中に分布しており、小麦粉や穀物の貯蔵施設、養鶏施設などに住み着く害虫として知られています。これまでの研究で、複数のミールワームがプラスチックを分解する能力を持っていることが判明していましたが、特にアフリカに住むミールワームについては詳しい情報が不足していたとのこと。

そこで研究チームは、レッサーミールワームがポリスチレンを消化・分解する能力を持っているのかどうかを調べる実験を行いました。以下の画像をクリックするとモザイクが外れ、レッサーミールワームがプラスチックを食べる写真を見ることができます。



研究チームは、レッサーミールワームを「ポリスチレンのみを与えるグループ」「ポリスチレンと栄養豊富なふすまの組み合わせを与えるグループ」「ふすまのみを与えるグループ」に分けて、1カ月以上にわたって経過を観察しました。なお、レッサーミールワームは8〜10週間ほど幼虫のままの形態で過ごします。

実験の結果、ポリスチレンとふすまの組み合わせを与えられたグループは、ポリスチレンのみを与えられたグループよりも生存率が高いことがわかりました。また、ふすまと組み合わせてポリスチレンを与えられると、ポリスチレンのみを与えられた場合よりも効率的にポリスチレンを消化することも確認されました。

論文の共著者であるICIPEのFathiya Khamis氏は、「ポリスチレンのみの食事はミールワームの生存をサポートしましたが、ポリスチレンを効率的に分解するための十分な栄養がありませんでした。この発見は、昆虫がプラスチックを最適に消費し分解するためには、バランスの取れた食事が重要だということを強調しています」と述べています。

以下の画像をクリックするとモザイクが外れ、「ポリスチレンとふすまを与えられたレッサーミールワームの写真(C)」と、「ポリスチレンのみを与えられたレッサーミールワームの写真(D)」を見ることができます。



左の写真(A)が実験前のポリスチレン、右の写真(B)が30日間の実験後のポリスチレン。確かにレッサーミールワームがポリスチレンを食べていることがわかります。



さらに研究チームは、ポリスチレンを与えられたレッサーミールワームの腸にはクライベラ属・ラクトコッカス属・クレブシエラ属などの、プラスチックを消化する酵素を産生する細菌群が豊富に生息していることも発見しました。また、さまざまな物質を分解するプロテオバクテリアやファーミキューテス門の細菌も見つかったとのことです。

Khamis氏は、「細菌の豊富さは、それがプラスチックの分解に重要な役割を果たしていることを示しています。レッサーミールワームはもともと、プラスチックを食べる能力を持っていないのかもしれません。その代わりにプラスチックを食べ始めると、腸内細菌がプラスチックを分解するように変化するのかもしれません」と述べています。

今後の研究では、ポリスチレンの分解に関与する特定の細菌株の単離と同定、および産生する酵素の分析に焦点を当てることができます。これにより、ミールワーム由来の細菌や酵素をプラスチック廃棄物の処理に使用できる可能性があるとのことです。