タケ・クボ(久保建英)は機知に富んだ発言をする。一見すると、サッカーのことしか興味がなさそうな印象を与えるが、どんな話題でも、言っていることはほとんどいつも的を射ている。
セビージャ戦後、先制ゴールを挙げて勝利に貢献した喜びもほどほどに、タケはバレンシアで200人以上の死者を出したDANA(寒冷低気圧)による豪雨災害について言及し、出身地が大きな被害に遭ったマジョルカ時代の指揮官、ビセンテ・モレノに寄り添った。
「非常に優秀な指揮官で、僕が1部リーグでプレーできるようにすべてを与えてくれた。その彼の故郷が惨事に見舞われた。彼の記者会見を見て、とても心が痛んだ。日本でも、何年か前に似たような災害があった。僕自身が経験したわけではないけど、大変な思いをした人々やバレンシアで命を落とした人たちに心からお悔やみ申し上げます」
タケはピッチ上でも同じだ。決して期待を裏切らない。スタメンで起用されれば、ゴールやアシスト、危険なプレーでその信頼に応えるのに時間はかからない。
だからこそイマノル・アルグアシル監督がここ数週間、彼にとってもチームにとっても心もとない状況下で、なぜタケの起用を躊躇したのか理解に苦しむ。
セビージャ戦でも、決定的な仕事をして、対峙するアドリア・ペドロサを手玉に取った。とりわけ1対1の状況では、タケは無類の強さを発揮する。マーカーは隙を見せた瞬間、貫通されることを覚悟しなければならない。
攻撃だけではない。ソシエダの勝因の1つが、セビージャのパスワークを封じたことだが、中盤をダイヤモンド型にした4−4−2でハイブロックを敷いて、各選手がマンツーマンでつくのではなく、中間にポジションを取る守備戦術において、タケはペドロサが得意とするインナーラップをケアしながら、プレスに奔走し続けた。
【動画】ドリブルから左足でゴラッソ!「ロッベンみたい」な久保の鮮烈弾
立ち上がりからエンジン全開だった。18分に遊び心満載の柔らかいクロスをゴール前に送り、22分に鋭いドリブルを仕掛けた後の34分だった。
得意のカットインからペドロサを振り切り、左足を一閃。豪快な一撃を突き刺してみせた。ミケル・オジャルサバルがミートできなかったが、左足アウトでクロスを入れた44分のプレーも遊び心満載だった。
後半立ち上がりも勢いは止まらず、49分にクロスを上げるが、サンビ・ロコンガにカットされ、52分に今度はドリブルで相手DFを引きつてから、ブライス・メンデスにボールを預け、続けざまのシュートを演出した。結局35分までプレーし、対照的に代わりに入ったシェラルド・ベッカーはほとんどインパクトを残せなかった。
試合後、タケは「8点」と自己採点をすると、再びその言葉は核心を突いた。
「選手というのはレギュラーの座をしっかりつかまなければならない。次節も僕は生き残っていると思うよ」
取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸
PCMAX
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