経営再建中のシャープが、動物からヒントを得た家電の開発に取り組んでいる。鳥の翼やネコの舌の形状をまねた独自技術で製品の性能を向上。不振が続いた液晶に代わる収益の柱の一つとして白物家電をてこ入れし、業績回復を目指す。
2枚の羽根が自然な風を生み出す送風機「はねやすめ」は、フクロウが大きな翼でゆっくりと飛ぶ姿に目を付けた。昨年の家電見本市で、骨格の構造や羽ばたく動作のメカニズムを取り入れた試作機をお披露目。早期の商品化を目指している。
シャープが「ネイチャーテクノロジー」と呼ぶこうした技術を取り入れた製品を初めて発売したのは、2008年にさかのぼる。空調機の省エネ化に苦戦していた担当者が、動植物を観察してものづくりに生かす生物模倣学の学会に出席していてひらめいた。エアコン室外機のプロペラファンを鳥の翼のような形状に変えたところ、送風効率が約20%も向上した。
11年に開発したサイクロン掃除機は、吸い込んだごみを圧縮するパーツの表面にネコの舌にあるような突起を付けた。ごみの体積を5分の1に圧縮、捨てる回数を減らすことができた。
これまでは主に既存製品の性能向上に役立てていたが、今後は新製品の開発にも力を入れる。今年10月発売したヘアブラシには、毛繕いが得意なラッコの手や爪の形を参考にしたピンを採用し、髪の絡まりをほどきやすくした。イオンを発生させる独自技術「プラズマクラスター」で静電気も軽減できる。開発責任者の公文ゆいさんは「ネイチャーテクノロジーがないとできないような商品や技術を作りたい」と意気込んでいる。