記載ミスは、指摘するとたいていの人はスムーズに正しい経歴を推してくれる。しかし、なかにはキレて文句を言い始めるような人もいる。「ほかにも故意に経歴詐称しているのでは?」と疑われやすいので、素直に訂正しよう。

実際よりもちょっと”盛ってしまう”といった詐称もよくある。過去の仕事でメイン担当ではなかったのにメイン担当と書いたり、プロジェクトの期間や規模を大きめに記載したり、受注金額などの成績を大きく記載するなどはありがちだ。面談・面接などで深く掘り下げるとボロが出て発覚する。

この程度も大きな問題にならない場合が多いが、信用を失うので当然やるべきではない。

その一方で、完全なる「経歴詐称」というレベルだと、会社名を騙ったり、資格や技能を騙ったり、雇用形態を騙るといった状態にまで達する。これらは完全にアウトだ。勤めたことのない大手の社名や重要な資格を堂々と詐称するケースはさすがにあまりないが、実際は持っていないマイナーな民間資格名を並べたり、パートだったのに正社員と書くなどは発生しやすい。

◆バレそうになって嘘を重ねた悪質求職者

最後に、サービスの黎明期、まだ経歴詐称のチェックに手こずっていた頃の大事件を紹介しよう。

私たちは建設業の施工管理の仕事の紹介実績が豊富で、施工管理技士や建築士といった施工管理ができる資格を持ったシニアが登録してくることも多い。そんな中、有資格者で、施工管理経験も何十年というシニアが登録してきた。ブランクはあるがすぐにでも現場に出られる、自信があるというので期間を置かず就職が決まった。

入社2週間後、就職先の建設会社からクレームの電話が入った。「仕事ができない」「実は資格もない」「入社直後の研修から雰囲気に違和感を持った」という。紹介した当社を訴えたいという建設会社をなだめ、担当者がシニアと就職先を交えた異例の三者面談に赴いた。

なんとその場で、シニアは新たな嘘で誤魔化そうとした。当社は事前面談をせず、資格や経歴を確認せず適当に求人企業に紹介しているというのだ。そこで担当者はその場で電話面談の予定表と通話履歴を見せ、履歴の電話番号にかけるとシニアの携帯電話が鳴った。

嘘が完全にバレたシニアはすべての嘘を認めて謝罪し、退職してこの事件は幕を閉じた。だが、就職先に大きな損害を与えていたら、もっと大きな事件になっただろう。

就職さえしてしまえば嘘も誤魔化せると思うかもしれないが、背負うリスクは大きく、周囲にも迷惑をかける。経歴詐称は絶対に行ってはいけない。

【中島康恵】
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中