[画像] わずか1時間の商談で1億円超を受注!商社マンだった私が「一度きりのチャンス」をものにした交渉術

たった一度のチャンスで相手の心をつかみ、他社に決まりかけていた大きな受注を獲得する……。本当にそんなことが可能なのだろうか? 新刊『なぜかうまくいく交渉術』の著者で、「ビジネス交渉コンサルタント」の生駒正明氏が、わずか1時間の商談で1億円超を受注したエピソードをもとに、その秘策を教える。

たった一度のチャンスをどうものにするか

ビジネスにおいて、大きな商談につながりそうなものの、交渉の機会が限られている場合もあるでしょう。こういった場合はどのように対処すればよいのでしょうか? 私の新規取引先開拓でのエピソードをもとに紹介します。

私が総合商社に入社して最初に配属されたのは、アパレル部門でした。この部門には、海外ブランドを扱う部署や、大手アパレルメーカーと取引する部署など様々ありますが、私は企業向けにユニフォームを販売する営業部に所属していました。

従業員が少ない企業はカタログから選びますが、大手企業はオリジナルデザインで、企業の顔とも言えるユニフォームを特注でつくります。この受注に向け、営業、企画、生産、納品までを一貫してマネージするのが私の仕事でした。

まず、見込み客となる企業を探すことから始めます。

例えば、前回のデザイン更新から10年以上経過している企業や、再来年に設立50周年を迎える企業などが有力候補です。相手企業が積極的に更新を望んでいない場合には、更新のタイミングを促す営業活動も行います。

何度も打ち合わせを重ね、信頼関係を築きながら交渉を進めていくのが通常の流れです。

相手の話を傾聴して感情に寄り添う

しかし、次のような特別なケースもあります。

ある日、突然の情報が入りました。大手プラントメーカーA社がユニフォームの更新を決定し、発注先の最終選定段階にあるというものでした。

完全に出遅れた状況でしたが、私はすぐにA社の担当責任者にアポを取り、一人で打ち合わせに臨みました。先方のスケジュールを考えると、私が交渉できるチャンスはこの一度きりでした。

この重要な機会に、私は自分の提案よりも、相手の話をじっくり傾聴することを重視しました。担当者からは、「ユニフォームの初回納品はスムーズだが、細かい追加対応に問題がある」という話がありました。

多くのユニフォームメーカーは、製品在庫や生地在庫を最小限に抑えているため、追加発注があると納期が遅れがちです。特に作業服は現場で使う消耗品のため、すぐに必要な場合が多く、全国からの追加発注に対応するのは大変な作業です。

そこで、相手の責任者の苦労に共感し、感情に寄り添うことに十分な時間をかけたあとで、ストレスや不便さを解消するための提案を行いました。

価値を感じてもらえる提案ができれば……

それは、製品在庫の明細だけでなく、現在の生地在庫で生産できる数量、そして今日発注した場合の納期を一覧表にして毎日アップデートするというものでした。

この提案により、「製品在庫もわかるし、追加発注に対応できる生地在庫もわかる。仮に、製品在庫以上の発注があっても、在庫生地で生産できる製品数量と納期がすぐにわかる」という点に価値を感じてもらうことができました。

さらに、私は自社の弱点も正直に伝えました。「縫製に関しては自社工場を持たないデメリットはありますが、それを補うために融通が利く協力工場が数社ありますので心配ありません」と説明しました。

一旦、信頼してもらえると、弱点も好意的に受け取ってもらえるものです。

結果として、この交渉で、初対面からわずか1時間で1億円超の受注を獲得しました。あとから聞いた話では、当社の価格は多少高めで、他社にほぼ決まりかけていた状況だったとのことでした。

このように、機会が限られる交渉であっても、相手の話を傾聴し相手が求めているものを理解し、価値を感じてもらえる提案を行うことで信頼関係を築けるのです。

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