[画像] 裁判で見えた冷酷な夫と子煩悩な父親の顔…妻毒殺容疑の「大手製薬会社の元研究員」家庭内別居の闇 

エリート夫婦に起きた悲劇

《救急車を早く呼ぶべきだったと後悔しています。どうせ二日酔いだろうと思った》

妻に有毒なメタノールを飲ませて殺害し、殺人の罪に問われている大手製薬会社「第一三共」の元研究員・吉田佳右被告(42)の公判が10月8日、東京地裁で開かれた。証人質問では冷めきった夫婦関係と妻が亡くなる前日の異変について吉田被告の口から語られた。

起訴状などによると吉田被告は’22年1月に妻の容子さん(当時40)にメタノールを飲ませ中毒死させた。自宅で容子さんが倒れた状態で見つかり、吉田被告が通報。病院に搬送されたが、その後に死亡が確認された。容子さんには前日から嘔吐を繰り返すなどの異変があったにもかかわらず救急車をすぐに呼ばなかった理由について吉田被告は冒頭の言葉を述べた。

「吉田被告は北海道大学大学院を修了後に第一三共に入社。入社後もアメリカの大学に留学するなど研究員としてのキャリアを積み上げていきました。容子さんも京都大大学院で修士号を取得し第一三共に入社したエリート研究員でした。はたから見れば、エリート夫婦ですが家庭内別居状態で夫婦関係は冷めきっていました。法廷では不倫、風俗通いというワードが飛び交っています」(全国紙司法担当記者)

汚らわしい! と罵られ

出廷した吉田被告はグレーのスーツに細い青色のネクタイ姿。目にかかる長い前髪が印象的だった。質問に対して関西弁で夫婦の馴れ初めから、事件前日と当日の様子について淡々と語った。

2人は同期入社で出会い結婚。しかし、すぐに容子さんに社内不倫の疑惑が浮上。吉田被告は離婚か退社を迫り、容子さんは退社の道を選んだ。その当時の容子さんの様子について吉田被告は、

「(研究者として)博士号、海外留学の道が絶たれて落ち込んでいた」

と振り返った。その後、容子さんは男児を出産。しかし、育児ストレスを原因に夫婦関係が再び悪化した。吉田被告に対して「育児放棄だ」と罵りながら動画を撮影するようになったという。夫婦関係が悪化していくなか吉田被告は、

「誰かに優しくされたかった」

と風俗通いを始めるようになった。しかし容子さんに風俗通いがバレて夫婦関係に決定的な亀裂が生じる。

「汚らわしいから服を全部捨てろ! 性病検査をしてから結果を見せろ!」

そう容子さんに罵られ、吉田被告はそれに従った。さらには「梅毒!」と罵倒されながら動画を撮影され、

「私が触った所を『汚い』と言って消毒をしたり、『臭い』と言って消臭スプレーを吹きかけられた」

などと語っている。さらに、吉田被告にとって何よりも辛かったのが息子との接触を禁じられたことだった。容子さんは内鍵のある寝室に息子とこもるようになり、家庭内別居状態になったのだ。

犯罪者の息子にはしない

ただ、こうした状況でも、吉田被告は離婚を考えなかったという。

「容子さんのストレスが息子にも向くようになり、息子を守るために吉田被告は離婚をしなかったようです」(前出・記者)

そして、この日、明らかになったのは事件前夜の容子さんの様子だ。嘔吐などを繰り返し、吉田被告の呼びかけにも呂律が回らず返事もできなかった状態だった。さらに廊下で全裸になり、水風呂に入ったり、「寝室で床に向かってオシッコをしていた」と吉田被告は証言した。こうした異変に気付きながらも救急車を呼ばなかったことについて、

「息子と過ごせる時間が楽しくて、見て見ぬ振りをしたのかもしれません。今となっては本当のところは分からないです」

と述べた。淡々と質問に答えていく吉田被告だが、息子の質問になると感情が宿る。

「子供のためには両親2人が揃っていることが必要だと思います。息子から母親を奪うような残酷なことはしません。犯罪者の息子にするような愚かな人間ではありません」

息子への思いを問われると、

「一番辛い目に遭っているのが息子です。一刻も早く駆け付けて息子を守ることが私の一番の望みです」

と訴えた。10月11日の公判では検察側は懲役18年を求刑。一方、無罪を主張する弁護側は、妻が自ら入手したメタノールを摂取して死亡した可能性は否定できないと指摘。確実に殺害するためには多量のメタノールが必要で、致死量を飲ませるのは現実的ではないと訴えた。

妻を毒殺した冷酷な夫か子煩悩な父親か。判決は10月30日に下される──。