◆撮られ慣れているから“いつもカメラ目線”

――このような写真を撮れる確率は、ジン君とウミちゃんではどのくらい違いますか?

小野:ジン君とウミちゃんで8:2ぐらいの割合じゃないかなあ? 1歳半ぐらいまではほぼ一緒だったんですが、最近はお姉ちゃんのほうが全然つれないので(笑)。

――ほかにおすすめの写真はありますか?

小野:ジン君のこういう写真もあります。僕は『にゃんこ体操』って呼んでるんですけど。

――たしかに、ラジオ体操の「体を横に曲げる運動」だ!

小野:向かって左から右に動こうと体をひねった瞬間です。でも、まさかこういう感じの写真になるとは思わなかった(笑)。あと、うちの子たちは小さい頃からカメラを向けて慣れているのでいつもカメラ目線です。

――本当だ、しっかりカメラ目線になってますね(笑)。

小野:ジン君もウミちゃんもそうです。『シュワッチ!』もカメラ目線だったし。

◆あえて生活感を残した仕上がりに

――ジン君のポーズとうしろの白い壁紙も、雰囲気がバッチリ合っています。

小野:うしろのコンセントも消そうと思えばフォトショップで消せるのですが、生活感があったほうがいいと思ってあえて残しています。よく「スタジオで撮影しているんですか?」と聞かれるのですが、自宅です(笑)。

――スタジオで撮影はしない?

小野:うちの子たちはビビリで人とあまり会ったことがないので、スタジオ撮影は無理だと思います。

――いつもの場所だから、これだけの動きを見せてくれるのかもしれないですね。

◆猫写真を撮るコツは?

――小野さんの写真を見た人たちからは、今までにどんな反響がありましたか?

小野:「猫ってこんな動きをするんだ!」という声が一番多いです。主に猫が好きな人たち、猫を飼っている人たちからの反応だと思います。

――「うちの猫ちゃんはこんなことしない!」というリアクションなんでしょうね。

小野:ただ、私の持論なんですが、こういう写真はどんな猫でも撮れると思うんです。猫の習性は個体差がそんなに大きくないし、興味があるものにはやっぱり興味を示すので。

たとえば、『シュワッチ!』は紐で遊んでいるときに撮った写真です。田代島で猫の世話を20年以上やっている方に聞いたのですが、その人は「猫は紐に飽きない」と言っていました。紐はまっすぐ垂らすと蛇みたいに見えるし、ちょろちょろっとすればミミズみたいになるし、跳ねさせると虫みたいになる。操り方次第では、いろんな形でアピールできます。

あと、猫それぞれに好きなおもちゃがあるのでそれを知っておくのも重要ですね。そのためには常に猫とコミュニケーションを取り、どんなおもちゃが好きなのかを把握してあげる。だから、猫とよく遊んであげるのが1番のコツかなと思います。そして、なによりも猫の習性を知っておくこと。この写真を見てください。

――かわいい!

小野:この写真は猫の習性を利用しました。猫って穴に入りたい動物なんですね。どんなに小さい穴でも、自分が入れないような穴でも、覗いてみたい気持ちがある。例えば、トイレットペーパーの芯をポンって置いておくと、気になって見ようとするんです。

この写真は、左側のウミちゃんがファインダーのちっちゃい穴を、右側のジン君がレンズフードの大きい穴を覗こうとする瞬間を捉えました。最初は「どちらかがファインダーを覗いてくれたら、猫が猫を撮っている写真になるな」と考えていたんです。でも、たまたま2匹同時に覗く場面を撮ることができた。奇跡だったと思います。

◆まるでバレリーナ!

小野:そして、ウミちゃんがバレリーナになっている写真。彼女は紐が大好きなので、頭上に紐を垂らしてあげました。それを掴もうと飛び上がっている瞬間です。つま先立ちの体勢になっているのか、いないのか。それがバレリーナに見えるか否かのポイントです。実際につま先立ちはしていませんよ。猫は絶対につま先立ちができません。ジャンプする瞬間を捉えているだけで、立ったわけじゃないです(笑)。