[9.28 J2第33節 清水 1-1 横浜FC 国立]
国立頂上決戦の均衡を破る先制点は、流れるようなサイド攻撃から生まれた。
横浜FCは0-0で迎えた後半11分、自陣からのビルドアップで左サイドを攻め込むと、MF中野嘉大がMF小川慶治朗とのワンツーから左足ダイレクトクロスを配球。これに反応したFW高橋利樹のヘディングシュートがクロスバーを叩き、跳ね返りをFWジョアン・パウロが押し込んだ。
クロス攻撃は今季のJ1昇格争いをリードする横浜FCの強みであり続けてきた中、この日は首位の清水エスパルスを相手になかなか通らない場面が続いていたが、得点シーンで際立ったのは中野のクロスの精度。利き足ではない左足でのダイレクトキックは今季、新天地で重点的に取り組んできたものだった。
「落としのクロスを左足で上げるのは今年まであまりやっていなかったけど、今年は真ん中3人に強い選手が多いので取り組んでいた。ここ最近はなかなかアシストで得点に絡めていなかったけど、あの1点はすごくいい形だった」(中野)
相手が守備時5バックでブロックを固めてきていた中、中野の「最近は5枚に合わせてくるチームが多く、一枚剥がすのはチームにいる上で大切なこと」という意識も結実。「あのシーンはビルドアップが苦しい形だったけど、それを逆手に取って得点シーンまで持って行けたのは自分の良さを出せたし、チームのためにもなるプレーだった」と手応えを残した。
またこの日はマッチアップした右ウイングバックがアタッカーのMF西澤健太だったこともあり、前半からあえてオフサイドポジションに流れて相手の視野を切り、ボールホルダーの動きに合わせて裏に抜け出す動きも連発。ボールが出なかったことで結果に表れることはなかったが、ロングフィードが来ていれば一発で裏を取れている場面がいくつもあった。
「来ていれば仕留める自信はあったけど、こういう観客がたくさんいる中で味方もいつも以上に見えていないところがあった。来ていれば欲しかったけど、そこまでネガティブにならず、来たときに結果を出そうと思って待っていた」(中野)。こうした隠れた仕事でも、今季の好調を支えてきた自身の価値を印象付けていた。
結果的にこの日は後半29分に失点し、1-1のドロー。残り5試合で3位・長崎(今節未消化)との暫定勝ち点差は11となっており、2位以内のJ1自動昇格に向けては一歩前進したとも言えるが、首位・清水との勝ち点差1をここでひっくり返すことはできなかった。
「これまでは1点取ってから追いつかれないで守り切るなり、突き放すなりができていた中、ちょっと安易な失点だった。もうちょっと事故的な失点ではなく、自分たちに課題が残る失点シーンだったので悔しい。ここで勝って、あとは自力で(優勝を)決められる展開に持っていきたかった」(中野)
それでも目標が失われたわけではなく、ブレずに進んでいく構えだ。今季でプロ10年目を数える31歳は「1位と2位で上がるのは全然違う。ここ最近、自分たちは負けていなくて、勝ち続けてきている中、1位で上がれれば自信になる」とJ2優勝への思いを持ちつつも、「まずは昇格を見据えて次の試合で勝ち点3を取れるようにやっていきたい」と冷静に決意を新たにしていた。
(取材・文 竹内達也)
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