[画像] 超新星爆発が噂されるベテルギウス。すぐ近くに兄弟星がいるのかも

2020年にハッブル宇宙望遠鏡が捉えたベテルギウス
Image: ESO/Digitized Sky Survey 2 謝辞: ダビデ・デ・マルティン

超新星爆発が近いのではないかと言われ続けているオリオン座の恒星ベテルギウス。星の明るさが変動し、暗くなると、いよいよ爆発では!?と注目が集まってきました。

そんな明るさの変動原因に新説が浮上しました。ベテルギウスの周りには、ベテルギウスを周回する小さな星(伴星)があり、その星が原因なのでないかというのです。

もしこの星が存在するなら、質量は太陽とほぼ同じだと予想されています。ニューフェイスが何で突如現れたの?と思うかもしれませんが、こやつがいることを仮定すると、ベテルギウスの謎についていろんなことがわかってくるのです。

不思議な変光周期は伴星の影響

ベテルギウスには2つの変光周期があります。メインのサイクルは420日周期、もう一つは2,170日(約6年)周期です。

これらの周期に沿って、明るくなったり暗くなったりを繰り返しています。最新の研究チームは、この不思議な2周期性の原因が、ベテルギウスとともに二重星系を形成する小さな星によるものだと仮定しました。この研究はまだ査読前ですが、プレプリントサーバーarXivで公開されています。

ハンガリーのコンコリー天文台の天文学者ラースロー・モルナル氏は、Gizmodoに対して以下のようにメールで語っています。

「もし伴星が存在するなら、両星は共通する重心の周りを回り、その結果、速度の変動を説明できます。また、伴星がベテルギウス周囲の塵に影響を与え、明るさの変動を引き起こしているのかもしれません。

この仮定に基づけば、ベテルギウスに対する理解が一変します。ベテルギウスはすでによく研究された星です。最初はまだ発見されていない伴星が存在するなどということは、考えもしませんでした」

寿命が近づく、ベテルギウス

ベテルギウスの寿命は約1000万年と、我々の太陽の寿命約50億年と比較するととても短いものです。地球から約642光年離れたところに位置し、夜空でも非常に明るく輝くこの星の質量は、太陽の15倍から20倍だと推定されています。

ベテルギウスに寿命が近づいていることは確実で、最終的には壮大な超新星爆発を起こす運命です。

ベテルギウスは、私たちの太陽よりもはるかに速いペースでエネルギーを消費しています(ちなみに太陽はあと50億年程度で最期を迎える予定とか…)。ベテルギウスがエネルギーを使い果たすと、外側に膨張し、星の中心部分は超高密度の中性子星やブラックホールになると予想されています。

研究の共同著者で、ワイオミング大学の天文学者メリディス・ジョイス氏は、Gizmodoに対してメールで以下のように述べています。

「私たちのチームが愛称を付けた 「BetelBuddy」(ベテルギウスの伴星 alpha Ori B)がもし発見されたなら、二次周期が起きている理由や、変光している理由がわかり、ベテルギウスの変動段階が判明します。

もし伴星が存在すれば、ベテルギウスが核ヘリウム燃焼期に入っているといえるでしょう。核ヘリウム燃焼期にあるということは、超新星爆発まで残り約10万年ということになります」

減光の原因は伴星が影響を及ぼす塵か

近年、奇妙な挙動を見せ始めているベテルギウス。2019年後半から2020年初頭にかけて、星の明るさが通常の40%まで減少しているんです。これが「大減光」と呼ばれる現象です。後に科学者たちは、この減光は星の表面から放出された大量の物質が冷えて塵の雲になり、星を遮って見せたことが原因であると結論づけました。

ある研究チームは、長い二次周期の原因は、伴星が塵を引きずって動き、その塵が主星の前を通過した際に一時的に明るさを遮断することに起因していると示唆しています。

一方、本研究の主著者であるフラットアイアン研究所の天文学者ジャレッド・ゴールドバーグ博士は、こうした研究を踏まえつつ、ベテルギウスや他の長い二次周期を持つ星が、伴星が主星の背後にいるときに減光することを発見しました。

つまり、引きずられた塵が減光の原因ではないと結論づけたのです。この伴星は、塵を引きずって動かすのではなく、重力によって、あるいは照射することで、塵に影響を与えている可能性が考えられるようになりました。

発見されれば、超新星爆発までの時間がわかるかも

Image: Rogelio Bernal Andreo / Wikimedia Commons
右上のオレンジの光、ベテルギウスは、オリオン座の恒星です

ソルボンヌ大学の天文学者で、2021年に「Nature」誌に発表されたベテルギウスを覆う塵についての論文の共著者であるミゲル・モンタルゲス氏は、Gizmodoへのメールの中で次のように述べています。

「20世紀にベテルギウスの伴星 alpha Ori Bの発見が何度か報告されていますが、後にすべてが間違いであったことが証明されています。ベテルギウスは巨大な星です。統計的に見ても、そのような星が兄弟星を持たずに生まれること自体が稀なので、ベテルギウスに伴星が存在することは、驚くべきことではないといえます」

モンタルゲス氏は、この研究が赤色超巨星の理解に重要なものになると付け加えました。

昨年、ある研究チームは、ベテルギウスが従来の予測よりもはるかに早く、数十年以内、あるいは数世紀以内に超新星になると予測しました。しかし、他の天文学者たちはこれに反論し、ベテルギウスがまだ核ヘリウム燃焼期にあり、超巨星の最終段階である核炭素燃焼期には達していないと主張しました。

「伴星自体はベテルギウスが明日爆発するか、あるいは西暦10万2024年に爆発するかに影響を与えません」とゴールドバーグ氏は述べました。

「しかし、伴星の発見は、ベテルギウスがいつ爆発するかをより正確に予測する鍵となるでしょう」

簡単ではなさそうだけど、見つけてほしい兄弟星

そんな伴星を発見するのは簡単ではないようです。ベテルギウスは「信じられないほど、とてつもなく明るい」からだとモルナル氏は述べています。

「そんな明るい星の隣で、太陽サイズの小さな星は、ほとんど検出不可能かもしれません」

ただ、「ほとんど検出不可能」ということは、可能性はあるということ。ゴールドバーグ氏はこのように述べます。

「他の星の周りにある暗い惑星を直接撮影するために使用している技術を、明るい星の周りにある伴星の検出にも応用できる可能性があるのではないかと考えています」

これらの太陽系外惑星のいくつかは、宿主星の前を通過する際に発見されます。惑星自体によって星の光が遮られることで、望遠鏡上で星の存在が明らかになるのです。

これからより細かいベテルギウスの観測が行なわれていくでしょう。この星が発見されれば、超新星爆発を地球から見られるまでの正確な時間が、わかるかもしれません。

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