オープンソースソフトウェアの開発プロジェクトでは「企業が開発に貢献せずに修正依頼ばかり送りつけてくる」といった問題が発生しがちです。オープンソースCMS「Drupal」の開発チームはプロジェクトの貢献度を可視化することで問題を回避しようと試みています。
Solving the Maker-Taker problem | Dries Buytaert
https://dri.es/solving-the-maker-taker-problem
オープンソースソフトウェアは大企業の営利プロジェクトにも採用されており、現代のIT産業の大部分はオープンソースソフトウェアなしでは成り立たない状態になっています。しかし、オープンソースソフトウェアは極少数の開発者の無償の奉仕で開発されているものも多く、「企業が貢献しないくせに修正は求めてくる」という問題が発生しがちです。最近ではWordPressの開発者でAutomatticのCEOでもあるマット・マレンウェッグ氏がWP Engineを「WordPressに貢献せず利益だけを得ている」として糾弾する事例も発生しました。
AutomatticのCEO兼WordPressの開発者のマット・マレンウェッグ氏がWP Engineを「WordPressの癌(がん)である」と痛烈に批判 - GIGAZINE
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Drupalの開発者であるドリス・バイタルト氏は、オープンソースプロジェクトで発生しがちな「開発者(メーカー)」と「貢献せずに利益を得る他者(テイカー)」の関係を「メーカー・テイカー問題」と名付け、その解決方法を示しています。
バイタルト氏ではメーカー・テイカー問題を解決するために「テイカーをメーカーに変える流れを作る」ことを重視しました。具体的には「開発エコシステム内のメーカーとテイカーを可視化する」「メーカーを積極的に支援する」「ユーザーに対してメーカーを選ぶことの重要性を伝える」という3点に気を配ったとのこと。
Drupalの開発コミュニティでは「コントリビューションクレジットシステム」と呼ばれる仕組みを導入しており、コードの投稿やドキュメントの修正といった貢献に応じてクレジットを付与しています。さらに、開発に貢献するユーザーの所属組織を誰でも閲覧可能な状態にしています。これにより、どのような組織に所属する人物がメーカーとして活動しているのかを可視化することに成功しています。
また、「イベントのスポンサーシップ権利を一定以上のクレジットを持つ組織にのみ付与する」「クレジットの保有数に応じてマーケットプレイスでの表示順位を変更する」といった施策によって、ユーザーに貢献度の高い組織を知らせ、「貢献度が高いほどビジネスを行いやすくなる環境」を整備しています。加えて、バイタルト氏はイベントの講演で貢献度の高いユーザーを称賛し、プロジェクトに貢献することの重要性を発信しています。
Drupalはコントリビューションクレジットシステムの公平性を確保するために、中立な第三者機関に監視を依頼しています。これらの施策によって、Drupalでは健全な開発エコシステムを構築できているそうです。
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