「失敗したらやめる。良さそうだったら続ける。このような方針のもと、さまざまな新規事業を発表してきました。取り扱い車種の拡大や法人受付の開始、サブスク契約期間中に新しいトヨタ車に乗り換え可能な『のりかえGO』、契約者様向け優待メニューもある『モビリティマーケット』、純正オプションを販売店で後付けできる『KINTO FACTORY』など、3年間で9つの施策を実施しています。

 社長の小寺がアイデアマンで、何かの拍子に事業のアイデアやシーズが思い浮かぶと、新規事業の候補案としてストックしているんです。今でも20~30個くらいの事業アイデアがあって、事業性があればプロジェクト化していきます」

 サービスを多角化するのは、新しいモビリティカンパニーのプラットフォーマーとして、サブスク以外にも取り組むべき事業があると捉えているからだ。早期成長を実現するためには「走りながらサービスの品質改善や拡充を繰り返す」ことが重要になってくるわけだ。

◆人生で“最初”と“最後”のクルマをKINTOに

 また、KINTOのメインターゲットとなる若年層へのコミュニケーションもテコ入れを図ってきた。

 企業視点による「新規性やサービス名」を打ち出すのではなく、顧客視点に立った「共感や楽しい世界観」が伝わるように訴求軸を変え、さらにはテレビCMだけではなくYouTubeやTVerでの広告配信を行うなど、若年層へのアプローチも工夫を凝らしてきた。

 こうした取り組みが功を奏し、KINTOを契約するユーザーの増加につながった。現在では、KINTOのユーザーの4割を占めるのが20〜30代となっている。

 クルマに関わる諸経費が月額利用料に全て含まれているため、面倒なことを考えずに家計管理しやすい利便性が、若年層の“ファーストカー需要”を捉えていると言えるだろう。

 また、最新の安全装備を搭載したクルマに乗れることから、シニア層のユーザーも多く、「カスタマーライフサイクルの中で“最初”と“最後”の1台をKINTOが担っている」と曽根原さんは語る。

◆KINTO Unlimitedと専売プリウスが起爆剤に

 こうしたなか、KINTOの契約者数が飛躍的に伸びたのは、2023年12月から開始した「KINTO Unlimited」だ。

 KINTOの基本プランであるKINTO ONEは、クルマの維持に必要な保険やメンテナンスなどの諸経費が“コミコミ”の月額料金体系になっている。

 一方でKINTO Unlimitedの場合は、KINTO ONEのサービスに加えて「クルマの進化=アップグレード」と「クルマの見守り=コネクティッド」というトヨタの先進サービスを追加。

「進化」と「見守り」によってリセールバリュー(クルマの再販価値)を高く保ち、その分を月額利用料の引き下げに充てることで、以前よりもリーズナブルな月額でクルマを提供できるようになった。

「これまでの『新車を売って終わり』というビジネスモデルに、トヨタ自動車は課題意識を持っていました。クルマをお届けした後も付加価値を提供できる新しいクルマの売り方を提案したいというトヨタ自動車の想いがアップグレードを前提とした車づくりを生み、それをお客様と直接つながることのできるサブスクサービスを展開するKINTOを通じて提供したのがKINTO Unlimitedです。

 KINTO Unlimited対象車種には、車両開発の段階からアップグレードサービスに必要な施工作業を想定し、後付けで簡単に部品を装着できる『アップグレードレディ設計』が採用されており、トヨタ自動車の最新の技術が詰め込まれています。特にKINTO専売であるプリウス Uグレードは非常に好評で、サービスの急成長を支える車種となっていますね」

◆KINTOはトヨタにとっての“実験台”。新しいクルマづくりを目指して