株式会社壱番屋(本部)の売上(フランチャイズ収入)は、売上551億円(前年比114.2%)、利益47億円(前年比130.5%)、営業利益率8.6%(前年比114.7%)となっている。財務基盤は自己資本比率が70.2%と安定している。ROEは8.7%と、自己資本比率が高い割には、その資本を効率的に活用し利益を上げているのが分かる。

◆定説を覆したココイチのブランド価値

 日本の国民食のひとつであるカレー。そもそも、カレーは家庭で食べるものといったイメージが定着していた。それぞれの家庭に独自の「我が家のカレー」があり、昭和は特にそうだったものである。経済成長に伴い共稼ぎ世帯が増えることを背景に、忙しい中での家庭の食事は簡便化ニーズが高くなる。

 そのため、まとめづくりができて、冷蔵庫に保存しておけば、いつでも食べられるといった、その利便性もカレーが普及した要因だ。その後、核家族化など世帯人数の減少から、家で作らずレトルトカレーで済ませるという家庭が増えてきた。

 食品メーカーが開発販売するのは、ボリュームのある市場を狙った標準味のレトルトカレーが多い。その標準的なレトルトカレーに食べ慣れた人たちが増えてきたのもカレー専門店が増えた要因であろう。

 そういった環境の変化に適合させ、あえて飽きの来ないカレーを基本メニューにして、来店頻度を高めた上で、辛さや豊富なトッピングを用意し、顧客のほうでカスタマイズさせる工夫が受け入れられたのがココイチであろう。多店舗展開できた原動力は、それらをどの店よりもうまくやり切ったからだ。

 夏本番、最もカレーが食べたくなる季節で、安定した需要があるから値上げしても売上の落ち込みは少ないとの判断で、値上げを追随する店も出てくることが想定されるが、業界リーダーであるココイチの価格戦略を、他店は注視しているのは当然だ。

物価高騰でうどん店の経営も厳しい

 うどん店も主力食材である小麦粉も1.5倍の値上がりし、その他のコストも他と同様に高騰している。その中で国内最大のうどんチェーンである「丸亀製麺」も、この難局を自店に優位になるように、値上げや付加価値の追求で顧客に理解を求めながら、創意工夫して運営力の強化に努めている。うどん市場も1位と2位には歴然とした差がある。

 丸亀製麺を運営するのは株式会社トリドールホールディングスである。1985年8月、焼鳥居酒屋「トリドール三番館」を創業し、2000年11月に讃岐うどん専門店「丸亀製麺」1号店を出店。現在の店舗数は840店舗(2024年3月期)である。2016年10月持株会社体制移行に伴い、株式会社トリドールホールディングスに商号変更して現在に至る。

 収益状況は、国内その他と海外事業を含めて、売上2320億円、営業利益116億円、営業利益率5.0%である。自己資本比率は30.5%となっており、資本効率を重視した経営を実践した経営になっているようだ。

◆圧倒的な優位性を確保した丸亀製麺

 中核ブランドの丸亀製麺は、売上の約50%を占めており、順調に推移しており、売上実績は1021億円(2023年3月期)→1149億円(2024年3月期)と12.4%増と伸ばしており、過去最高も更新している。営業利益も116億円(2023年3月期)→183億円(2024年3月期)と、59%増と伸ばしている。営業利益の16.0%は驚異の収益力であり、これだけ儲ける力があるのは素晴らしい。

 うどんチェーン業界も店舗数・売上と共に、1位と2位の間には開きがあり、2位の吉野家グループのはなまるうどんは、店舗数418店舗、チェーン売上334億円、営業収入292億円(2024年2月期)だ。丸亀製麺のほうが出店数は2倍以上、売上は3倍以上の差があり、圧倒的な優位性を確保している。