AI懐疑論の中には、膨大な額に積み上がったGAFAM各社の設備投資を問題視する声も聞かれるが、マイクロソフト、アマゾン、メタに関しては、間違いなく今後も大型の設備投資を実行していくだろう。アジュールの設備はいまの需要に追い付いていないし、AWSも同様だ。アマゾンの先日の決算で興味深かったのは、会社側が「皆さんはAWSについて誤解している」と指摘したことだ。世界中に巨大なデータセンターを抱えていて、それらにサーバー、通信機器等の機材を最適配置するための、物流への膨大な投資が必要になるのだと。

 メタは少し前まで株式マーケットから失敗プロジェクト扱いされていたメタバース向けに、巨大なネットワーク投資をしていたのがいまになって生きている。一時は無謀な投資とさえ言われたが、結果的には「つくっていて良かった」のだ。この勢いを受けて、同社も積極的な投資を続けるだろうが、確かなことは、生成AIを本気で事業に取り込んでいくためには、データセンター向けの投資を惜しんではいけないということだ。

 3社に対してアルファベットだけは、AIへの設備投資のあり方を見直すと表明している。一つの要因は、クラウド大手の中では10%強のシェアと、比較的規模が小さいということもあるだろう。だが、これによって同社のAI事業が他社から出遅れることになるかもしれない。同社の株価は8月初めの暴落から戻り切っていないが、これにはこうしたマーケットの疑念があるのではないか。

 株価の低迷ならアマゾンも似たようなものだが、同社の場合は別の理由がある。報道ではEC(電子商取引)の利益率低下などが挙げられていたが、それ以上にマーケットが期待していた自社株買いを実行しなかった、ということが大きかったのではないか。AWSは順調に推移していて、事業への不安は感じない。同社に関しては、押し目は買いにいってもいいと考えている。決算発表では、利益率低下の主因は消費者の節約志向が高まったためと説明していたが、節約志向が高まれば、同社の強みが発揮されるはずだからだ。

 GAFAMの残り1社、アップル については、アマゾンとは逆に、5月に発表した空前の自社株買いの効力が続いている。24年4-6月期の決算発表では、値引き販売によって中国市場の売り上げが回復し、加えて生成AI搭載の「アップルインテリジェンス」が8月から開発者向けにプログラムを公開することが伝えられた。今秋発売予定の「iPhone16」でどの程度採用されるかは現時点では不明だが、期待感から株価は堅調に推移している。

◆エヌビディア決算の最も注目すべきポイントとは?

 GAFAM各社の決算が出そろったことで、今後のマーケットの焦点は、言うまでもなく8月28日(日本時間:8月29日)のエヌビディア 、24年5-7月期決算に移行する。今年に入ってから決算ごとにマーケットにサプライズをもたらしてきた同社に対しては、もうこれ以上のサプライズは期待できないのではないかという声もある。だが、AI半導体への実需は確実に拡大している。私は今回も期待できるのではないかと考えている。前回、24年2-4月期決算では、好業績とともに株式分割や市場想定外の増配が好感されたが、今回のサプライズは、業績そのものではないだろうか。

 今回のエヌビディア決算で私が特に注目したいポイントは、今四半期から生産が開始されている最新GPU「Blackwell(ブラックウェル)」のシリーズの中で、上位機種の「GB200」と「GB200 NVL72」、「GB200 NVL32」の受注がどのぐらいのウエイトを占めているのかということだ。会社側が詳細を発表するかどうかは分からないが、こうした上位機種の受注が多い場合は、生成AI関連システムが巨大化していく過程にあることを示すことになり、売り上げも一気に拡大するからだ。市場予想を上回る業績を達成することもあり得る。先日、「ブラックウェル」の出荷が約3カ月遅れる可能性があると報道されたが、そうなると来期、26年1月期の売り上げが飛躍的に膨らんでいく可能性があるのだ。