[画像] 【ライブレポート】KISHOW from GRANRODEO、「歌いたいこと、言いたいことは全部込められた」



GRANRODEOのボーカリスト・KISHOWが、7月にリリースした初のソロアルバム『深夜零時』を引っさげて行った<KISHOW LIVE TOUR 2024「MIDNIGHT CIRCUS」>。これは、2025年にデビュー20周年を迎えるGRANRODEOが、e-ZUKA(G)に続いて進行している20周年プロジェクト「Road to G20th」の第2弾となるKISHOWのソロワーク。2024年8月10日の大阪・なんばHatchからスタートし、彼の誕生日である8月11日の名古屋・DIAMOND HALL公演を経て8月15日、神奈川・KT Zepp Yokohamaにてファイナルを迎えた。





GRANRODEOとしては何度も立っている舞台だが、このツアーではセットからしていつもと違って新鮮だ。フラットなステージにバンドセットがゆとりを持って配置され、光のバーがそれを取り囲んでいる。“大人の上質なPOPS”をコンセプトにしたアルバム『深夜零時』にふさわしい、シンプルで落ち着いた雰囲気の中で、今からKISHOWがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、気持ちが弾む。

開演の19時。まるでジャズクラブにいるような、ジャジーでゴージャスなインストゥルメンタルが流れると、フロアからクラップが巻き起こり、このツアー中に“MIDNIGHT LOVERS”とKISHOWが命名したサポートバンドが登場。メンバーはアルバムレコーディングにも参加していたバンマスの大内慶(G)、アベノブユキ(B)、裕木レオン(Dr)、滝澤俊輔(Key)、後藤天太(Sax、Fl)の5人だ。BGMが盛り上がる中、軽やかにくるくると舞いながらKISHOWがステージへ。大きな歓声に迎えられたオープニングナンバーは、ツアータイトルにも掲げられた「Midnight circus」だ。ミステリアスなメロディーとビッグバンドなサウンドにのせて、KISHOWが力強い歌声でマジカルな闇夜のサーカスに〈さぁ おいでよ いますぐに〉と手を広げる。その曲からオーディエンスは一気に、今までGRANRODEOのライブでは経験したことのない別世界へと誘われる。







「みなさんこんばんは、GRANRODEOというバンドからやってきました、ボーカルのKISHOWです」とにこやかに挨拶するKISHOW。「短いようでやっぱり短かったツアーの今日がファイナル」だが「今日ファイナルということを念頭において、心ゆくまで騒いでいただきたいと思います」と語りかけ、クラブテイストあふれるダンサブルな「Fifty-Fifty」と、柔らかなKISHOWの情感あふれるボーカルがムーディーなR&Bバラード「純度」へ。バラエティに富んだ作家陣を招いて制作された『深夜零時』からのナンバーは、彼自身の歌声の変化も相まって、1曲1曲でガラリとステージの景色を変えていく。





改めて『深夜零時』の制作を振り返るKISHOWは、初のソロアルバムにはGRANRODEOのボーカルとして積み上げたものだけでなく、声優・谷山紀章として携わるキャラクターソングで培ったスキルや経験を反映させたと語った。短いツアーではあったが、KISHOWとメンバーとの間に生まれた微笑ましいエピソードにも、客席からも笑いが起こり、じつは「GRANRODEOの前にも僕、ソロワークをちょっとやってたんですよ、実は。大人に騙されて(笑)」と昔を振り返る。

「多分知らない人も多いと思うけど、ノれる方は乗って、懐かしがる方は懐かしんで、新しい方は新しい感じで聴いてロックしていただきたいなと思います」





放たれたのは、2005年に谷山紀章名義でリリースした2枚のシングルからのナンバーだ。印象的なギターリフが刺さる「百年の孤独」。GRANRODEOのライブを彷彿とさせるように、スタンドマイクを肩に背負って始まったキャッチーなロックナンバー「Warrior」。そして、後のMCでも語られていたように“作詞:谷山紀章、作曲・編曲:飯塚昌明”のクレジットで世に出たGRANRODEOのプロトタイプの1曲でもあった、スポーティで軽快なロックチューン「Fly away」。どれも19年前、リリースイベントでしか歌われてこなかった幻の楽曲ばかり。『深夜零時』ナンバーでは封印していた強烈なシャウトと激しいパフォーマンスを開放したKISHOWに、ファンも歓喜した。

熱狂を巻き散らかしてKISHOWが去り、ステージは青い照明に包まれる。流れてきたのは、e-ZUKA作曲の「DD BLUES」をモチーフにした「深夜零時(Interlude)」。その音源に重なるように、時計台の鐘の音が12個打たれ、深夜のサーカスはここでまたひとつ景色を変える。

ステージ中央に椅子が置かれ、ゴールドのシャツに着替えたKISHOWが座る。ここからアコースティックセットで2曲。滝澤俊輔のピアノが美しくイントロを奏でて始まったのは、3兄弟で結成されたアメリカのバンド・ハンソンが1997年にヒットさせた珠玉のバラード「I Will Come To You」だ。そしてもう1曲、KISHOWが「今回のツアータイトルが頭に浮かんだと同時くらいに、いつかカバー曲をやるとしたらここしかないと思ってました」と紹介されたのは、2012年にリリースされたシンガーソングライター・七尾旅人の名曲「サーカスナイト」だ。ここは楽園じゃないけど、描ける限りの夢の中なんだと歌われる歌詞は、深夜の妄想の中に飛び込む『深夜零時』の世界観とリンクする。ふくよかなKISHOWのボーカルと後藤天太のフルートが奏でるハーモニーに酔わされた。



ここまで歌った楽曲を振り返り、KISHOWらしいユーモアを交えたMCで客席をなごませたところで、次は「正真正銘、谷山紀章名義で一番最初にこの世に出た曲を聴いていただき、アルバム『深夜零時』の方からまだやっていないナンバーを、立て続けに行きたいと思います。しっとりして聴いて欲しいけど、盛り上がるところは盛り上がって!」と宣言し、編曲をe-ZUKAが手がけていた「Daydreamin'」を披露する。

そのままステージは、19年の時計の針を巻いて『深夜零時』の世界線へと戻ってくる。

愛する人を失ってしまった男の未練を歌う「let me dream of you」はアルバム以上にドラマティックに。バンドメンバーの紹介ソロ〜セッションから始まったファンクナンバー「Lucky for you」ではバンドとダンスステップを踏みながら、パワフルに歌詞をまくしたて、鮮やかなフェイクを散らす。手を左右にワイパーしながらのシンガロングとコール&レスポンスに、オーディエンスも大いに沸いた。ROLLY節が炸裂するグラマラスな「Cyborg No.61298」では高く足を振り上げてバンドと入り乱れ、「Flower Tambourine Dance」では星形のタンバリンを軽やかに叩きながら、個性的な歌声で独特の世界を表現する。



「いや今楽しいわ」と笑顔を見せ。「ありがとう。多分みんながいるからだね」と客席に語りかけるKISHOW。そして「e-ZUKAさんがいないと何にもできないような僕を、短いようで短かったツアーで支えてくれたバンドメンバーに拍手を」と言ってメンバーと言葉を交わし、本編ラストとなる曲を「僕のシンガーとしてのキャリアにおいても非常に特殊な曲で、今後、歌う活動を続けていくにあたって、大切にしていかなきゃいけない曲になったなと思います」と紹介する。

「すごく軽やかで、皆さんの心も軽くなるような。どんなシチュエーションで聴いても、心に羽根が生えるような曲なんじゃないかな。でもしっかりと、皆様の一人の夜に寄り添えるような曲になればいいなと思います」と言って歌われたのは、洗練されたグルーヴが心地よいアーバンポップス「Every Single Night」。今までも理解していたつもりだったが、こうしてカラフルに輝きを変える多彩な楽曲を叩きつけられると、KISHOWのシンガーとしての振り幅とその実力の高さに、改めて驚かされる。

穏やかな手拍子に迎えられてのアンコール。ツアーシャツに着替えて出てきたバンドメンバーは、それぞれの楽器ポジションに戻ることなくステージ中央で、KISHOWを囲んで1列に並び、スポットライトを浴びてフィンガースナップする。『深夜零時』ではKISHOWがバックトラックを全て歌ったドゥーワップナンバー「Game」を、このツアーではバンドを交えたアカペラで再現。透き通ったハーモニーが、KT Zepp Yokohamaを包み込んだ。

声優を始めた29年前、いずれ歌を歌える存在になればいいなと思い、声優10年目でGRANRODEOを結成して20年が経つKISHOWは、「シンガーとしてもちゃんと矜持を持ってやってきたつもりです。それがこうしてソロライブという、ある種、また一つ結実したものを皆さんの前で披露できて僕は幸せ」「こみ上げるものがある」と言う。そしてGRANRODEOのボーカリストとして、シンガーとして、声優だからこその表現を二足のわらじで追求しながら「これからも歌い続けていきたいと思います、ひとつよろしくお願いします」と語り、大きな拍手に包まれた。



ツアーを締めくくるファイナルナンバーは、往年のJ-POPの楽しさ、華やかさがあふれる「Run for run」。どこへ向かうか分からない時もあるが、道はずっと続いている、だから走ろう!〈いまが次の未来のはじまり〉だとメッセージするこの曲こそ、「Road to G20th」にふさわしい。全員で合わせた〈On your mark〉〈Get set go!〉の歌声は、めくるめく多幸感を呼び起こした。

KISHOWが最後に告げた「歌いたいこと、言いたいことは全部込められたと思います。また次回、お会いする機会があったら、そこでまた別な形で会いましょう。ありがとうございました!」の言葉に、大きな歓声が贈られた。



9月25日には「Road to G20th」3部作のラストを飾るGRANRODEOの35thシングル『GR STORY』がリリースされ、10月からは、16都市20公演の全国ツアー『GRANRODEO LIVE TOUR 2024-2025 「GREAT ROAD STORY」』がスタートする。e-ZUKA、KISHOWがそれぞれのソロワークを経て、GRANRODEOにどんな新しい1ページを刻んでくれるか、楽しみに待ちたい。



GRANRODEO ニューシングル

Road to G20th 3部作第三弾「GR STORY」
2024.9.25 On Sale



◆GRANRODEOオフィシャルサイト