――作品のテイストが、Season1とはまた違います。

市原:Season1では地上波ならではの面白さを提供されていたと思うので、我々は我々でWOWOWでしかなし得ない掘り下げ方をしていきたいと要望いたしました。しっかりとすべてのスタッフ、役者のことを信じて寄り添ってくださる監督陣なので、そこに迷いはありませんが、これから田胡として、どんな心情にたどり着くのか、どこまで入っていけるのか。正直、自分としては孤独感でいっぱいです。

◆主人公に寄り添ううち、涙が出たり声が出なくなったり

――孤独感、ですか。

市原:常に心に影を持った田胡悠人の気持ちに寄り添う、その一択しかないのですが、脚本には描かれていないのに、もどしたくなってしまったり、涙が止まらなくなったり、声が出なくなったりしています。

――内へ内へと入っていくキツイ作業のようですが、視聴者にとっては、田胡はかなりなぞに包まれた人物です。

市原:そうなんです。主役ですが、人を巻き込んでいく役でもありません。誰かに何かを訴えかけるというよりも、お客様に何かを拾っていただき感じていただく作品になっていると思います。クライムサスペンスとしてのテンポ感も楽しんでいただきつつ、田胡がなぜ詐欺師になったのかを最終回まで追いかけていただけたらと思います。ものすごく生々しい人間の姿を見ていただけるんじゃないかと。僕としては、苦悩して悩んでいる様を、そのまま田胡に投影できればいいなと思っています。

◆デビューから25年、さらに25年後の自分に

――最後に、CMデビューから今年で25年目です。さらに今から25年後の自分にメッセージをお願いします。

市原:25年後というと、60歳も過ぎてますよね。「今のオレは頑張ってるよ。60歳過ぎたオレも、理由なき反抗はしてくれているよね」でしょうか。何かに対する漠然とした“怒り”といったものが、僕の原動力でもあるんです。決して自分が正しいとは思いませんが、この25年間、悔し涙も飲みながら、理不尽で矛盾した出来事にも向き合いながら、なんとか這いつくばってやってきました。そうした“怒り”を力に、これからもお芝居でいろんな人の心を動かすことができたらいいなと思っています。

<取材・文・撮影:望月ふみ ヘアメイク:大森裕行 (VANITES)>

【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi