[7.10 天皇杯3回戦 柏2-1(延長)筑波大 三協F柏]
2年前の対戦後には号泣する姿がみられたMF田村蒼生(4年=柏U-18)だが、この日の涙はなかった。「泣きそうになりましたけど、今回は絶対に耐えようと思って耐えました」。同じ敗戦という結果に終わったが、大学生活で2度、柏レイソルと真剣勝負ができたという奇跡を、今度はしっかりと受け止めた。
ファーストプレーからこの試合にかける思いが伝わった。前半3分には「絶対に俺が打とうと思っていた」というファーストシュート。混戦を抜けたシュートは、ユース時代の同級生GK佐々木雅士の胸の中に収まったが、柏サポーターの目の前で蹴り込まれた弾道は、十分のインパクトを残した。
田村自身も「柏のゴール裏が最初は攻める側だったので、(得点を)決めて黙らせようかなと思ったし、雅士がGKだったので余計に決めたい思いがあった」と気合十分に試合に入っていたことを明かす。好勝負を演じながらも結果が伴わなかった2年前の対戦。その反省から「結果」だけにこだわって、序盤からエンジンを全開にした。
しかし軍配はまたも柏に上がった。田村らが途中交代した一方で、柏はベンチスタートしていた主力選手が次々と登場。筑波大は田村が交代したあとの後半35分にセットプレーからオウンゴールを誘発して同点に追いついたが、延長前半10分にCKをFW細谷真大に頭で合わされて勝ち越しを許した。
ベンチに下がってから見せられた“プロ選手の意地”。「本当に差をみせられた。このままじゃいけないと思わせてくれたのが真大だった」。ユース時代の1学年先輩で、プライベートでも仲がいいという細谷がみせてくれたことに、新たな刺激を貰った様子だ。
そして勝負の世界への憧れをより強く持つことができた。町田、そして柏と対戦できたことで、自分の武器である攻撃力が通用することに自信も深めた。ただあくまでも目指すべき選手像は、“チームを勝たせる選手”。「Jのピッチで今度は自分が決めてやり返したいなというのが率直な感想です」。先日まで教育実習を行っていた田村だが、卒業後の進路に迷いはなくなったようだ。
(取材・文 児玉幸洋)
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