[インハイ準決勝]神村学園 1−0 米子北/8月2日/Jヴィレッジスタジアム
インターハイ準決勝で神村学園に0−1で敗れ、ベスト4に終わった米子北。今大会でも堅い守備と高速かつ強度の高いカウンターアタックを見せたチームの最終ラインに、一際目立つ1年生がいた。
180センチのDF熊野俊典は、球際の強さと読みの鋭さを駆使した対人能力の高いCB。2年生CBの浜梶優大とコンビを組みながら、相手のロングパスを弾き返したり、進入してくるFWの受け渡しや自由を奪ったりと大きな存在感を放った。
「1年生で試合に出させてもらって、責任感はもちろん、ピッチの中では上級生に甘えないで、逆に自分から発信して強気でプレーをしようと常に思っています」
この言葉通り、1年生とは思えない堂々たるプレーを見せる熊野にとって、米子北の白いユニホームは小さい頃から憧れだった。
大阪府出身の熊野は、小学校時代に夢中になって全国高校サッカー選手権大会を見ていた。初めて選手権を見た時、白いユニホームのチームに目を奪われた。
「当時はまだ米子北という名前は知らなかったのですが、『あの白いチーム凄いな』と一目惚れしたんです。守備が本当に堅くて、ボールを奪ってから攻撃のスピードに度肝を抜かれました。何よりピッチにいる全員が全力で走っている姿に『かっこいい、ここでプレーしたい』と思うようになったんです」
そこから毎年のように選手権に出場する米子北の試合を夢中になって見るようになった。そして高槻FCジュニアユースに進んだ際に、「センターバックをやりたいです」と指導者に直訴し、CBでプレーするようになってからは、さらに米子北への思いは強くなっていった。
「小学校の時はすべてのポジションをやりました。そのうえで中学になってポジションを固定したいと思った時に、センターバックが自分に一番合っていると思ったんです。理由は、攻撃は10回中1回成功したら褒められたり、評価されたりするのですが、守備は10回中1回でもミスをしてしまったら戦犯扱いになってしまう。責任感が一番求められるポジションなので、逆にそこをやりたいと強く思いました」
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どんどんCBの魅力にハマっていくにつれて、「米子北でセンターバックとして堅守速攻のサッカーに貢献したい」という思いが強くなった。中学3年生になると大阪府内、府外の強豪校からの誘いを受けるなかで、「米子北一択でした」と声がかかっていない米子北への練習参加をコーチに直訴。頼み込んだ末、学校に直接連絡をしてもらい、練習参加の道を自力で繋いだ。
そして練習参加を経て入学すると、これまでの思いをプレーで表現し、プレミアリーグWESTで出番を得ると、今大会では背番号3を託され、1回戦から5試合すべてにフル出場を果たした。
「米子北に来てまだ半年ですが、本当に来て良かったと思います。憧れから実際に入ってみても、練習からの選手全員の意識、1対1の激しさが凄まじくて、試合になったら全員で声を出して、一体感が凄まじいんです。やっぱり自分に合っているサッカーですし、自分の長所を伸ばせるし、短所も磨いてくれるチーム。だからこそ、今は2、3年生のサポートを受けてプレーできていますが、1年生だからと遠慮せずに、もっとまとめられる部分はまとめていく意識を強く持ってやらないといけないと痛感しました」
徐々に芽生えてきた堅守速攻の守備の要としての意識と自覚。
「今のままではチームの勝利に貢献できないと思うので、これからプレミアWESTの後期を経て成長をして、選手権優勝に貢献したいと思っています。自分が鍵を握っているという気持ちも持って取り組んでいきたいです」
日に日に深まっていくチームへの愛情と共に、注目の1年生CBはその計り知れないポテンシャルを力に変えながら、成長の軌跡を描いていく。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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