どのような仕事をしていても、何らかの「ミス」は起こってしまうもの。読者の皆さんも多かれ少なかれミスを犯してしまったことがあるでしょう。車という高額商品を取り扱うディーラーでも、どれくらい気を遣っていても何らかのミスを犯してしまいます。
今回紹介する5つの事件やミスは、筆者が4年間勤務していたとある日系自動車メーカーのディーラーで実際に起こったものです。あなたの新車はこのようなことが起こっていないかと思いますが、読んでみてください。
◆やらかし事件簿その1:「新車のナンバープレートつけ間違え」
ナンバープレートを車に付ける作業は、基本的に陸運支局で行います。ですが、ディーラーでは陸運支局の敷地内ではなく、ディーラーの敷地内でナンバーを取り付けて後ろの左に封印できる特別な許可を得ています。
同じ店舗に勤務していた営業マンのAさんは、人柄がよく顧客からの信頼も厚い方でした。Aさんのお客様が新車を注文する際に、ナンバープレートは好きな4桁の数字が選べる「希望ナンバー」となっていました。希望ナンバーを選ばなければ、ナンバープレートは登録順に与えられる4桁になるのですが、タイミングが悪いと「4219」や「4989」といった語呂の悪い数字になってしまうこともあるので、営業マンからしたら「せっかくの新車ですから」と多少費用がかかっても希望ナンバーを勧めます。
Aさんのお客様は数字にこだわりがないので「おまかせでいいよ」という方も多く、なかばAさんがわかりやすい数字で希望ナンバーを取得していました。これがことの発端なのですが、納車が近い3名の新車のナンバーが全て同じ数字(例えば1234)になっていてややこしい状況になっていたのです。
本来であればナンバープレートを車に付けて封印するときは2名体制で車台番号とナンバーを照らし合わす「ダブルチェック」を行うのが基本業務なのですが、Aさんはそれを怠けて1人で行なったことで納車後に事件が発覚。とあるお客様から「車検証に書いてある平仮名と車についているナンバーの平仮名が違う」と問い合わせがあったのです。
その問い合わせが発生し、店舗内は大騒ぎ。該当する顧客に連絡し実車を確認、車を預かって後日陸運支局に車を持ち込んで手続きをするということになってしまいました。
◆やらかし事件簿その2:「車庫証明のごまかし」
次のケースは担当顧客の紹介で新車の注文をいただいた営業マンBさんの話。車のナンバー登録をするには必須な「車庫証明」に関する出来事です。
車庫証明を申請するとき、自動車の保管場所が「自宅から半径2km以内」という決まり事があるのですが、ご注文をいただいたお客様が借りている駐車場の書類の準備をしているとき、地図を確認したら微妙に半径2kmから飛び出ていることが発覚。本来であれば車庫として警察署に認められない案件のためお客様に確認したところ「前に車を買った時から同じ駐車場だから大丈夫」ということでしたが明らかにアウトなのでは……という案件でした。
営業マンBさんは上司に確認を取りましたが「とりあえず警察に出してみて弾かれたら考えよう」とのことで、地図に手書きで記載する際にギリギリ2kmになるように小細工をしてから提出。
以前から同じ車庫として申請していたので警察からはお咎めなしで車庫証明を取得できましたが、法的にはアウトの案件です。10年以上前の話なので笑い話として聞いていただければ、と思いますが、厳密にいうとこれは「車庫飛ばし」と呼ばれる行為に抵触する可能性があります。
皆さんも駐車場を借りる際は自宅の近くに借りてくださいね。
◆やらかし事件簿その3:「納車直前の新車が…」
顧客の新車納車を3日後に控える営業マンCさん。工場から出荷され、納整センターでオプション装着後に店舗に到着。意気揚々と届いた車をチェックしていたら、フロントガラスに飛び石傷が……。
皆さんも見たことがあるかと思いますが、新車は工場で作られたあと、複数台搭載可能な積載車に載せられ店舗に運ばれてきます。おそらくその時に飛んできた小石がフロントガラスを直撃し、ガラスに傷が入ってしまったと推測されます。
このようなことが起こると、ディーラー店舗では修理対応をせずに納整センターあるいは工場に車を戻して手直ししてもらいます。実は塗装に異物が混入していたり、頼んでいたオプションが付いていなかったりすると同じ手順を踏むので日常茶飯事だったりもします。
傷が発覚したのが納車3日前ということで、Cさんは顧客に平謝り。納車日をずらして事なきを得ましたが、この新車を納車されるお客様は運が良かったのか悪かったのかは本人のみぞ知る、という事態でした。
◆やらかし事件簿その4:「月末の書類ミス」
筆者の新人営業マン時代のやらかしを暴露します。月末ギリギリの注文をいただき、書類を整理している際にお客様が記入して押印する必要のある書類にミスを犯しました。
その書類を本社に当日中に届けないと月末の実績にならないということで、お客様に即座に電話し、職場に直行。書類を書き直していただいて無事に実績となりましたが、お客様はもちろんご立腹。お詫びとしてお客様にオプションパーツを、自腹を切ってプレゼントするという、苦い思い出です。
実はベテラン営業マンであっても書類の記入ミスを行うこともありますが、ベテラン勢はうまくリカバリーする方法を体得しています。今は完全にNGですが、机の引き出しを開けると他人の印鑑がズラッと並んでいる、というのは本当の話です。
◆やらかし事件簿その5:「メカニックがやらかしていた…」
最後のやらかしは若手メカニックD君のやらかし。お客様の車を預かって点検とオイル交換の作業中。先輩メカニックに「エンジンオイルを抜いたのに新しいオイルが溢れてくるんです」とD君。
先輩メカニックがよくよく車を見ると、エンジンオイルではなくミッションを動かすATFを抜いていたことが発覚。車を動かす前でよかったね、と笑い話していましたが、D君はメーカー系の自動車整備学校を卒業していたのに……という俄かに信じがたい話でした。
後日談ですが、D君がやらかした夜、先輩メカニック数人にこっぴどく叱られたのは当たり前の話ですが、当のD君は全く悪びれる様子もなく、のほほんとしていたようです。恐るべし若手世代、とベテランメカニックたちが立ち話しているのを聞いていた当時3年目の営業マンの私でした。
<TEXT/宇野源一>
【宇野 源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801
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