[画像] ホカ 、初の旗艦店をNY5番街にオープン。人気絶頂ブランドが体験価値を重視する理由

明るいブルーのファサードに、店内には荒々しい岩壁を配置したホカ(Hoka)の新しい旗艦店は、一流のアスレチックブランドとしての同社の評判を高めるとともに、アパレルなど新製品ラインの実証基盤の役割を担うことを目指している。

NYマンハッタンのミッドタウン5番街に6月7日にオープンした9000平方フィート(約836平方メートル)の店舗は、記録的な1年を終えたばかりのホカにとって初の旗艦店であり、米国では8番目の店舗となる。同社のプレジデントを務めるロビン・グリーン氏によると、この店舗の目標は、ブランドを紹介し、より大規模なキャンペーンをアピールするとともに、全商品の品揃えを展示する場所を確保することだという。だがそこにはコミュニティの要素もあり、オンラインではできないやり方で顧客とつながることを意図していると、グリーン氏は言う。ランナーたちは店の1階に集い、更衣室やロッカーを利用することができ、またそこはホカ・ランクラブ(Hoka Run Club)のミーティングスポットにもなる。

「これによってブランド全体をひとつの場所に集約できる」と、グリーン氏は米モダンリテールに語った。「米国や世界のほかの地域でブランド認知度を高めていくなか、さまざまな消費者にとって本当にパーソナルで体験的な方法でブランドについての口コミを広めてもらう素晴らしい手段だ」。

ナイキと類似したフラッグシップ戦略



ホカが20億ドル(約3143億円)規模のブランドとなりつつある時に、この店舗はオープンした。親会社デッカーズ(Deckers)の決算によれば、昨年度、ホカの全世界での売上高は前年同期比28%増の18億ドル(約2829億円)を記録した。CEOのデビッド・パワーズ氏は、成長の要因として、グローバルブランドキャンペーンの拡大、OOHマーケティング資産の増加、ランニングイベントのスポンサー(ホカは世界最高峰といわれるトレイルランニング大会UTMBの冠スポンサーである)など、マーケティング投資の拡大を挙げた。パワーズ氏によると、小売店の規模拡大も追い風になっているという。2024年の夏季オリンピックを控え、最近では欧州で2番目となる店舗を仏パリにオープンした。

商業不動産会社アルバレス&マルサル(Alvarez & Marsal)のシニアバイスプレジデント、レベッカ・フィッツ氏は、ホカのフラッグシップ戦略はナイキ(Nike)に類似していると話す。ナイキはスポンサーとなっているクラブやランを通じてブランドのエバンジェリストとつながるために、店舗を活用してきた。過去に小売プラットフォームのリープ(Leap)およびワービーパーカー(Warby Parker)の社内不動産部門のバイスプレジデントを務めていたフィッツ氏は、「ちょっとした戦略に従っているのかもしれない」と語る。「このようなハブを作ることで、(ブランドを)いい感じに拡張している」。

だがホカは、アスリート以外のオーディエンスにもリーチできるという点で、ほかのブランドとは一線を画している。フィッツ氏いわく、当初のターゲット層を超えて同ブランドの人気が高まっていることは、大規模で派手な空間を作ることに意味がある理由のひとつにもなっている。5月の決算説明会でCEOのパワーズ氏は、ランナーに人気があるにもかかわらず、ホカは「フィットネス志向の消費者」のあいだでも成長していると述べた。18歳から34歳の間での認知度は前年比でほぼ倍増している。

「人々はこのブランドに非常に強い感情を抱いている。みんなの気持ちを引き付けるものがある」とフィッツ氏は述べている。「今デッカーズにいるなら、このブランドエクイティを目にして、これをさらに活性化させるにはどうしたらよいのかを考える必要がある。熱狂的なファン層をどのように活用するかが重要だ」。

アパレルを扱う全米初の店舗



ナイキとフリートフィート(Fleet Feet)に約17年間勤務した後、2月にホカのプレジデントに就任したグリーン氏は、ニューヨーク市という場所は、海外からの観光という要素に加えてローカルという側面からも旗艦店として戦略的な選択だったと話す。「ニューヨークエリアのランニングコミュニティと交流し、成長することができる。人々がやってきて荷物を預け、着替えて友人と会い、ランニングをして、再び店に戻って来て商品をチェックすることができる」。

マーチャンダイジングの観点からすると、この店舗はホカのアパレルを扱う全米初の店舗となるが、アパレルは同社が重要な機会を見出している小規模なカテゴリーである。ホカの衣料品は主にオンラインや海外の店舗で販売されているが、米国の小売市場では新しいものだという。

「アパレルは重要な役割を果たすだろう」とグリーン氏は述べた。「消費者がどのようにその商品に関与するかという点について、しっかりと理解を深め、学びたいと考えている」。

販売経験では、トレイルやランニング、それ以外を問わず、製品教育に重点を置く。グリーン氏によると、販売員は顧客に対する挨拶や商品に関する説明で重要な役割を果たすという。探している商品を顧客が見つけやすいように、店内のあちこちにはQRコードが設置されている。新しいシューズが発売されるたびに店舗ではキャンペーンを実施する。

「店内に入った人は誰もが、製品が何を達成しようとしていて、そのために私たちが何を目指しているのかを明確に理解して店を出る」とグリーン氏は言う。

顧客理解を深める機会に



今後については、旗艦店を持つことで初めての顧客やリピーターのことをさらに深く知ることができるだろうと、グリーン氏は述べた。同氏はホカがどのような顧客データツールを使っているかについては明かさなかったものの、販売データはリピーターや新規顧客について、あるいは特定のセグメントがどのように成長しているかについてなどを知るのに役立つという。また、こうした取り組みを促進するため、ホカは会員制プログラムの展開にも取り組んでいる。

さらに店舗を増やすことに関しては、将来の旗艦店の可能性も検討中だとグリーン氏は述べた。

「それは小売販売の観点からするとKPIを測定する機会だが、我々は消費者がブランドに真に求めているもの--つまり何がうまくいっていて、何が機能していないのかを理解したいとも考えている。消費者を知れば知るほど、より優位に立つことができる」。

[原文:Why Hoka is leaning on community with its first NYC flagship]

Melissa Daniels(翻訳:Maya Kishida、編集:戸田美子)
Photographed by Elias Parise