[画像] ペットボトル飲料が脳卒中、がん、肝硬変などのリスクを高める? その「驚きのメカニズム」

脳卒中だけじゃない

今年の1月から3月にかけて、アメリカで2本の衝撃的な研究論文が立て続けに発表された。

(1〈ペットボトル飲料には大量のマイクロプラスチック(以下MP)が含まれている〉

(2)〈MPが体内にあると、脳卒中や心筋梗塞を引き起こしやすい〉

この両者を組み合わせてペットボトル飲料と脳卒中の関連性を疑い、飲むのをやめる医師が続出しているのだ。口に入れるたびに少しずつ体内に溜まっていくMPやナノプラスチック(MPよりさらに微細なプラスチック。以下NP)だが、関連が疑われているのは脳卒中や心筋梗塞だけではない。

「MPやNPが血管に入ると、血流に乗って血液が集まりやすい肺や肝臓、妊婦の胎盤などに蓄積されるため、そこで重篤な疾患を引き起こしてもおかしくない。とくにNPはサイズが小さくて体内のさまざまなバリアをすり抜けてしまうので、体の至る所で悪さをしかねません」(済生会熊本病院の橋本洋一郎氏)

実際にドイツのハンブルク大学が行った研究では、MPと肝硬変の関連性が指摘されている。肝硬変で肝移植を受けた患者の肝臓を調べたところ、全員からMPを検出したものの、同条件で肝疾患がない人の肝臓を検査しても発見されなかった。

コロンビア大学が発表した(1)の論文の著者の一人で、同大准教授のベイザン・ヤン氏は「ペットボトル飲料を通じて体内に入ったMPやNPは血管に入り込みやすい」と指摘しており、飲み物から入り込んだMPが血流に乗って肝臓にたどり着き、肝硬変の要因となっている可能性がある。

免疫細胞が死滅していく

これが細菌やウイルスであれば、免疫が適切に働いて異物を排除してくれるだろう。しかしプラスチックだとそう簡単にはいかない。

「プラスチックそのものが人体にとって毒であるため、排除する免疫細胞の負担が大きい。ユトレヒト大学の研究によると、MPやNPと接触した免疫細胞は、それ以外の異物を排除する場合と比べて、約3倍のスピードで死滅していくと判明しています。もし体内に大量のMPが溜まっていれば、それに対処するうちに免疫機能も弱っていくと考えられますね」(MPと脳卒中の関連を示した(2)の論文の著者の一人で、イタリアのカンパニア大学の内科医ジュゼッペ・パオリッソ氏)

MPやNPだけでなく、製造過程で添加されるさまざまな化学物質も体内で悪影響を及ぼしている。その危険性を指摘するのは、東京農工大学教授の高田秀重氏だ。

「ペットボトルのキャップには、酸化防止剤のノニルフェノールや紫外線吸収剤のベンゾトリアゾールといった添加剤が含まれています。これらが体内でホルモンの働きを乱して、性や生殖に関する異常を引き起こすと考えられる。男性は精子数が減少しますし、女性なら乳がんや子宮内膜症の原因になりかねません」

前出の橋本氏が懸念するのは、MPやNPがさらに多くの疾患を引き起こしている可能性だ。

「これまで体内のMPやNPはサイズが小さすぎて検出できなかったため、疾患との関連性も不明なままでした。しかし検査技術が確立すれば、原因不明の疾患の犯人が実はMPやNPだった、という事態も考えられる」

さまざまな疾患を防いで健康を守るためには、目に見えないMPをなるべく体に入れないように暮らす必要がある。

後編記事『毎週「クレジットカード1枚分」のプラスチックが体内に…少しでも減らせる「5つの方法」』では、その方法を具体的に探っていこう。

「週刊現代」2024年6月22日号より

毎週「クレジットカード1枚分」のプラスチックが体内に…少しでも減らせる「5つの方法」