桜が開花を迎えるなか、入社式や
入学式など、着慣れていないスーツを身にまとった若者たちと街中ですれ違う。新しい門出に本人はもちろん、それを支えてきた両親も気合いが入る気持ちはわからなくもないが、そこで「しくじってしまった」という人たちもいる。
◆入学式で同じスーツを着ている子ばかり…
埼玉県で美容師をしている島谷のぞみさん(42歳・仮名)の長女は第一希望の難関大学に合格。つい先日、入学式だった。しかし……。
「娘と同じスーツを着ている子がものすごく多かったんですよ」
彼女のスーツは3月初め頃に大型スーツ量販店で購入。いくつかデパートもまわったというが「コスパ的にやはり量販店が良かった」と振り返る。
「スーツ、シャツ、靴、バッグ……。すべてデパートで購入したら簡単に10万円を超えてしまう。ただ、親から見てもかなり勉強を頑張っていたので、好きなのを買ってあげようとは思っていたんですが」
いろいろなブランドのスーツを見てまわるうちに娘も疲れてしまい、量販店に移動。すると想像を超えるコスパの入学式セットがあったそうだ。
「全部セットで4万円を切るんです。おすすめとして、トータル
コーディネートがしてあるからバランスもいいし、『体型さえ変わらなければ就活にも使える』なんていうアドバイスももらって。娘も『これがいい!』というので即決。すごく気に入ってくれて、私も嬉しかったのですが……」
◆「これじゃあ制服と変わらないなあ」
そして迎えた入学式当日。ウキウキしながら
家族そろって電車に乗り、大学に向かった。すると……。
「同じ電車の車両に全く同じセットのスーツを着ている子がいたんです。同じ大学とは限らないし、そのときは『偶然だねぇ』と笑っていましたが……」
入学式に着いてびっくり。なんと「少なくとも同じセットの子と10人はすれ違いました」と苦笑する。
「娘も同じセットの子もすれ違いながら『あれ?』みたいになっていましたね。なかには『また同じ格好してるね』という声も聞こえてきました。娘は当初気に入ってくれていましたが、帰りの電車でも同じセットの子とすれ違って『これじゃあ制服と変わらないなあ』と嘆いていました」
この話を高校時代の友人にしたところ、同じセットを買っていた子が驚くほど多かったとか。
「どこの親も考えることは一緒なんだと思いました(笑)。とりあえず、もう就活までスーツの出番はなさそうですが『バッグとシャツだけ変えればそんなにバレないかも』と娘が言っていました。落ち込むほどではないですが、こういう可能性も考えるべきだったと思いましたね」
◆上京する娘に「不憫な思いをさせないように」
宮城県在住の宮田芳美さん(50歳・仮名)も、先日、次女が東京の大学に進学したばかり。上京する娘に「不憫な思いをさせないように」と、“ある物”をプレゼントしたそうだが……。
「子供が上京するにあたって、大学の入学金に加え、
一人暮らしのマンションの契約なども含めて、使ったお金は200万円近くかかりました」
親元を離れる娘にさびしい気持ちもあるが、それよりも「頑張って欲しい」と思っているという。
「仙台も都会といえば都会ですが、やっぱり『東京は違うのかな』という思いもありました。もう社会人の長女が『東京で女子大生になるなら、ブランドもんの1つでもないと惨めなんじゃない?』と言い出したのです」
それを聞いた長男が「一人だけブランドもんを持ってないからって、パパ活とかするかもな」と悪い冗談を言う。
「まさか!とは思いましたが、娘や息子の感覚のほうが近いだろうし、次女も2人が私を誘導するように『相談していたのかも』って」