[画像] TikTokショップ に美容ブランドは興味津々も、Z世代は「消したがっている」

Z世代はTikTokショップ(TikTok Shop)を気に入っていない。これは、2月27日に開催された「eTail West(イーテールウエスト)」カンファレンス内で、メイクアップブランドのミラニ(Milani)でCMOを務めるジェレミー・ローウェンスタイン氏とZスイート(Z Suite)と呼ばれるZ世代のグループとで行われたオンステージディスカッションの結果である。

「誰もTikTokショップを求めていない」

Zスイートは、PR会社のバーンズコミュニケーションズグループ(Berns Communications Group)によって結成され、小売業者、消費者、テクノロジー企業向けのフォーカスグループとして機能している。「彼らは誰もTikTokショップを求めていない」とローウェンスタイン氏はパネルセッションのハイライトを引用して語った。「できることなら、おすすめ(For You)ページでそれを表示させないことを望んでいる」。ディスカッションで、パネリストたちはどの美容小売店を選ぶかについて尋ねられると、TikTokショップではなくセレクトショップのセフォラ(Sephora)または大手通販のAmazonを選び、TikTokショップを気に入っていないことを強調した。しかしミラニ側は、この商売の場を見限ってはいない。昨年7月に報告されたように、ミラニの年間売上高は約2億ドル(約296億円)で、2023年には前年比で約30%増の成長を達成している。ここ数年、同社は革新的でありながら手頃な価格の化粧品を提供し、さらに若者文化への理解を示すことで、若い消費者に支持されている。ローウェンスタイン氏は、美容品会社のコティ(Coty)およびコパリ(Kopari)でキャリアを積んだのち、2021年にミラニに加わった。以下の米グロッシーとの対談で、同氏はミラニのこれまでのTikTokショップ戦略とそのプラットフォーム固有のコンテンツを作成するための取り組みについて説明した。また、現在の「デジタルコンテンツの飽和状態」に対するブランドの対応についても言及している。

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――ミラニはTikTokショップにどのように取り組んできたか?

美容業界のほかの各社と同様に、当社もそれを詳しく調査し、適切な方法で試して学ぼうとしている。TikTokショップのインフルエンサーは、非常に珍しいタイプのインフルエンサーだ。我々みんなが知っていて、愛し、関係を築いてきたインフルエンサーは、必ずしもTikTokショップを宣伝したいわけではない。なぜなら、TikTokショップの宣伝が利益相反になると考えているからだ。誰もがスポンサー付きのブランドコンテンツを配信し、報酬を受け取っているが、コミュニティが自分たちのリアルな声を求めてフォローしてくれているということを知っている。どのブランドもTikTokショップの商機に賭けているが、当社では、少しばかり歩いて様子見するというようなアプローチをとっている。まずは、オーガニック戦略と費用をかけた戦略の結果を確認したい。また、Z世代がTikTokショップにまったく興味がないと話している事実も興味深い。さらに、TikTokの存在価値を高めたのはエンターテイメントだったことも面白い。TikTokショップはエンターテイメントではない。商売に関係するものだ。だから、消費者の行動遷移のなかで、どのタイミングで商品紹介をおすすめページに表示させるのが適切なのか、最適なバランスを見つける方法を探っている。

――ミラニのコンテンツ戦略は、どのソーシャルプラットフォームでも同じように考えられているのか?

チームとの対話では、常に「そのプラットフォームの役割は何か?」と問いかけている。同じタイプのコンテンツがすべてのチャネルで反響を呼ぶわけではないというのが私の持論だ。だから、「消費者はFacebookをどのように利用しているか? インスタグラムは? TikTokは? Snapchatは? レディットは? D2Cは? PDPは? Amazonは?」と尋ねている。結果的により多くのコンテンツが必要になるが、何をどこに、どのような理由で掲載するかを理解しておく必要がある。イメージ画像は依然として重要であり、動画もまた極めて重要だ。しかし、反響を呼ぶ動画の長さと形式は進化し続けている。動画に関しては、長いものも短いものもある。「その動画はいつ見られるのか」を考慮する必要がある。広告なら6秒で終わりだ。しかしTikTokでもインスタグラムでも、時間をかけてあなたのアカウントページに来たのなら、その人は詳しく知りたくてわざわざ探しに来たのだから、動画はもう少し長くてよい。Z世代は、商品の利点や見返りについて周囲から聞いてから、ブランドコンテンツを参考にすると話していた。そのあとでそのブランドに行き、「いいね、もっと詳しく教えて」と言う。

――Z世代は美容に関して非常に詳しいが、その知識量に驚かされたか?

ちょうどAI関連の仕事をしていて、マーケティングやブランドの言葉と消費者の言葉とのあいだにあるギャップを埋めることに取り組んでいる人と話をしたところだ。「見返り(payoff)」という言葉について考えてみよう。我々は商品の開発中、いつもこれについて話しているが、この言葉が消費者の心に響くかどうかはわからない。しかし、コンテンツにアクセスしやすくなり、消費者とマーケティング担当者が同じような言葉で話しはじめたのは良いことだと思う。消費者は我々が使う言葉を身につけ、我々は消費者が使う言葉を身につけている。今日のパネルディスカッションでZ世代が使用した「1使用あたりのコスト(cost-per-use)」というフレーズには驚いた。リップオイルに40ドル(約5900円)を支払っても、それを6カ月間使えれば、15ドル(約2200円)のマスカラを購入して1、2回使用して捨てるよりも、1使用あたりのコストは低いと指摘したのだ。「そうそう、我々はいつもそのことについて話しているんだ」という感じだった。また、「実際のところ、消費者は使用単価について考えているのだろうか」といつも疑問に思っていたが、ついに明らかになった。

――デジタル広告を取り巻く新たな制約をどのように乗り越えてきたか?

私の見解では、デジタルコンテンツは飽和状態にある。私は今でも重要だと思っているが、「流行は繰り返す(what’s old is new again)」という考え方が復活しつつある。つまり、屋外や対面での体験が効果的であることが判明している。Z世代はパンデミックを乗り越えたが、卒業式やプロムに参加できなかった。だから今、彼らは対面のコミュニティを切望しているという。そのため、彼らのためにそのような機会を作ることにはまさに見返りがある。当社では昨年、コンシール+パーフェクト(Conceal + Perfect)のフランチャイズをサポートする「ノーフィルター、ジャストミラニ(No Filter, Just Milani)」キャンペーンの一環として屋外キャンペーンを実施したが、それは素晴らしい成果を上げた。キャンペーンは確実に注目を集める。一方、TikTokでもインスタグラムでも、ソーシャルメディアで動画を視聴するときに見てもらえるのは、おそらく、長い動画でもそのうちの2秒だけだ。[原文:Gen Z wants to ‘turn off’ TikTok Shop, as beauty brands test the waters]JILL MANOFF(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:都築成果)