JR秋葉原駅の電気街南口を出て徒歩1分の場所にあるちょっと変わったビルが今、外国人観光客の人気スポットになっている。そのビルの名前は「m’s秋葉原店」(以下エムズ)。国内最大級のアダルトグッズ専門店で、観光客の間では通称「エロタワー」と呼ばれている。

地下1階から6階までの全フロアの一面にコスプレ衣装、ランジェリー、大人のおもちゃなどのアダルトグッズが展開されており、店内に入ると驚きを隠せないだろう。

ビルに入ってくる客の多くは外国人観光客で、陳列された商品やいたるところに貼られているセクシー女優やアダルトVTuberのポスターを見て驚いていた。

入り口の横には液晶パネルと顔出し看板が置かれているものの、さすがに顔を入れて写真を撮るのは恥ずかしいようで、パネルの写真を撮るだけにとどまる観光客が多かった。

店内に入ると、パロディ系のアダルトグッズが正面に置かれ、そのすぐ隣にはTENGAが数多く並べられた特設コーナーが併設されてある。

ビル内の移動は階段とエレベーターで行うことができる。エレベーターの内部には四方八方に春画が張られており、階段のほうはセクシー女優などのポスター、商品看板がでかでかと掲示されていて、アダルトな雰囲気を漂わせている。

また、定期的に有名なセクシー女優との握手会や撮影会などのイベントを開いており、そのために海外から訪れるファンもいるのだという。

しかし、海外からの観光客がなぜ、わざわざ日本にきてアダルトグッズを販売するビルに足を運ぶのだろうか。店の前で取材に応じてくれた20代後半のアメリカ人男性は、終始笑いながら我々に話をしてくれた。

「アメリカではこんなの絶対にないね(笑)。クレイジーで最高だよ。本当にこんなビルが街中にあって、それも大都会の中心部にあるのは不思議だし面白い。何より、日本人は誰も気にしてないのが凄いね」

アメリカでは、こうしたアダルトグッズの専門店が街のど真ん中にあるケースは珍しいようで、基本的には街はずれにあったり、人が通らない通りにあったりするのだという。

アメリカといっても州によってかなりの違いはあるが、取材に応じてくれた男性の地元では、アダルトグッズは通販かSM専門店のような特殊な店に行かなければ購入することはできないということも教えてくれた。

他の観光客はどうだろうか。店前で声を掛けると、フランス人の男性が取材に応じてくれた。彼自身は、特定の何かを買う予定はなく、前述の男性のように観光として、エムズに訪れていた。

「TENGAは知っているけど、日本の会社と認識したのは日本に来てからです。フランスでも有名なのかな? 認知度は高いと思います。これだけの数が置いてあるのは、大変面白いですね」

海外でも認知度が高いアダルトグッズ、TENGA。この男性は、エムズ以外にもドン・キホーテにアダルトグッズコーナーがあることに驚いている様子だった。

「日本ではアダルトな商品と普通の商品が同じフロアに売られていて、性について寛容なんだと感じました。TENGAはデザインにこだわっていて、見ていて飽きません。お土産に買って帰ろうかと思います」

これほど多くのアダルトグッズが堂々と街のど真ん中で売られているのは、海外の人から見ると異様な風景なのだろう。コンビニで18禁の本が置かれなくなったものの、アダルトグッズを販売しているビルが街のど真ん中に堂々と建っているという不思議な状況を見に、一度エムズを訪れてみてはいかがだろうか。

取材・文・PHOTO:白紙 緑