過去最高値を約34年ぶりに更新した日経平均。しかし、上がり続けているのは株価だけではない。東京23区の新築マンションの平均価格が、去年初めて1億円を突破。資材・人件費の高騰、過熱する投資が要因と言われているが、実は今ある問題が浮上している。

【映像】「晴海フラッグ」の建物&部屋の内部

 その舞台となっているのが、東京オリンピックパラリンピックの選手村跡地に建てられたマンション群「晴海フラッグ」。近隣相場に比べて比較的安く、商業施設や学校なども併設され、便利なことから人気が殺到。一方で、転売目的の投資家などが購入したことで価格が上がり、「住みたくても住めない」と訴える人が増えている。

 不動産で実需と投資はどう折り合えばいいのか。『ABEMA Prime』で考えた。

■晴海フラッグ転売、住宅ローンでの購入も?

 マンションの平均価格は緩やかに上昇していたが、2023年に大きく伸び、東京23区では1億1483万円(前年比39.4%増)、首都圏では8101万円となっている(出典:不動産研究所)。

 さくら事務所創業者兼会長で不動産コンサルタントの長嶋修氏は、不動産価格の高騰について「世界的な景気原則として、金利を上げると株価は調子が悪くなるし、不動産価格も下がる。それに対して、日本はまだ基本マイナス金利だ。日銀が政策変更をほのめかしているが、今の変動金利は0.3%程度。マイホーム買う人は住宅ローンを組むことが多いので、“不動産価格は高いけれども低金利を使えるなら今なのではないか”ということで動いている」と説明。

 晴海フラッグは、居住用21棟、計5632戸(賃貸:1487戸・分譲:4145戸)のマンション群で、約1万2000人が居住予定。分譲の去年2月までの販売分では、抽選倍率が最高266倍にものぼった。その人気ぶりについては「戸数があまりにも多い。売るためには全体で価格を下げて人気を集めないといけないので、デベロッパー側もかなり弱気だったと思う。だいたい相場の3割安ぐらいで、ものすごい人気になってしまった」と話す。

 長嶋氏は「買えない人が多く控えているので、値崩れはしばらくないだろう」との見方を示すが、疑問視されているのが転売目的での購入。「当人もまだ入居していないのに、もう転売され始めている。実は最初の頃、抽選に何戸でも申し込めたために倍率が上がり、途中から2戸までに制限された。投機・投資目的はNGで住む人だけ申し込めるという決まりにすることもできたが、そうしなかった」と指摘する。

 投資目的にもかかわらず、住宅ローンを利用して購入しているという話もあるようで、「住宅ローンというだけに、自分がそこに住むということで良い条件で借りられる。実際は投資ということであれば契約違反、金融機関等の違反になるので、一括返済を迫られる可能性がある」とした。

■マンション価格は今後も上昇?

 東京都23区の不動産価格の見通しについて、長嶋氏は「下がる様子はほとんどないだろう。1990年のバブル時は土地の総額が2000兆円あったが、今は1000兆円程度なわけだ。日経平均株価と都心3区(中央区・千代田区・港区)の中古マンションの成約平米単価の推移はおおむね連動していて、日経平均株価が最高値を更新したとなると、もう一段上がる可能性が高い。一方で、神奈川、埼玉、千葉はこんなに連動せず、さらに他の地域に行くとだらだら下がるだろう。日本全体の土地資産総額はおそらくあと20、30年かけて、今の1000兆円から600、700兆円に縮んでいくとみている」と話す。

 また、都市部については、「世界の大都市と比べると、これでもまだ割安だ。半分か7割ぐらい。世界のトレンドに追いつくという流れのプロセスにあり、このまま上がっていくという状況だ」とした。

 外国人の土地・物件購入について、15日の同番組に出演した北神圭朗衆院議員は「東京23区の新築マンションが中国人の爆買いで高騰している可能性がある。日本国民に手が出ないぐらいの高騰は規制を考えないといけない。安全保障上でも工作員になる可能性がある人に拠点を設けさせていいのかと思う」とコメントしている。

 長嶋氏は「中国人だけでなく、欧米社会からもマネーが入ってきている。しかし、外国人の投資を禁ずるような制度、政策は、先進国はとらない。新興国の場合には、土地を買い占められて乗っ取られるようなことがあるので、制限や禁止を設ける場合もある。先進国ならむしろ投資歓迎のスタンスだ」とする。

 とはいえ、価格が上がっていけば住みたくても住めない状況は続くのではないか。「頑張って買うとか、あまり好きでもないのに買ってしまうと、自分や家族の幸せと一致しなくなる。郊外でも、駅前・駅近はこの10年上がっているし、今後も下がる要素はないと思う。マンションは徒歩10分ぐらいまで、戸建てだったら広告表示で15分ぐらいの距離までは下がりづらいだろう。逆に、それを超えるとだらだら下がっていく。それらを自分たちの幸せを踏まえて、ちょっと駅から遠いものを買うというのもありだと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)