ドラゴン久保のアジアカップ・日本―イラン戦分析第1回

 サッカーのアジアカップ・カタール大会は3日、準々決勝で世界ランク17位の日本代表は同21位イランに1-2で敗れ、8強敗退となった。同点で迎えた後半アディショナルタイムにPKで決勝点を献上。アジア王者奪還はならなかった。2022年のワールドカップ(W杯)カタール大会で独自の解説がひそかに話題となった元日本代表FW久保竜彦が今大会も東京・中目黒のTHE ANSWER編集部に来訪し、試合を分析した。全3回の第1回は「完敗」と試合を振り返り、決勝点のPK献上に絡んだDF板倉滉の“異変”について分析。また、それ以上に「イランとの差を感じた」という日本の課題について、ドラゴン流の視点で指摘した。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 完敗やね。怖さはずっとあった。いつ入ってもおかしくない、じゃないけど。ちょっとしたことで点が入りそうな隙はあったよね。

 やっぱ、板倉の裏やな。コンディション悪かったのか、何なのか。久々に見たよな、ディフェンスラインで(あれだけ精彩を欠いたのは)。なんかフィットしてない感じがしたよね。最初からおかしかったもん。ボールを持って上がる時の脚のもつれ方っちゅうか、なんちゅうか。

 毎熊が絞り気味にやったりしとったけど、前にも行ってというのもあれや(難しい)し、後半ああなったんやろね。全体的に。やっぱきつくなって、ディフェンスラインも下がって。無理に頑張って上げようとしたところを裏にポーンと入れられた。板倉の裏を狙ってたね、絶対。

 無理にでも上げたいと思うんやろね。ただ、その対応がね。やっぱ、コンディションが良くなかったのかな。怪我でもしとったんか。あんだけ被るのなんか見たことないもんな。それがここで出たっていうのと。板倉を代えるっていうのも、すごく難しかったんやろな。

 そりゃ代えるのも怖いよね、イランやから。今までの相手だとね、代えれるけど。前田のところを代えるのも難しかったと思うし。

 今日のイランは徹底して板倉の裏を突いとったよね。

 試合中に見つけたのか、何なのか。板倉は悪くなかったもんね、今日の試合まで。だから、試合中に見つけたんやろね。「なんか、あれやで(狙えるぞ)」みたいな。冨安と比べたら、そっち狙うのかもしれんけど。でも20番(アズムン)は上手かった、本当に。怖かったよね。

「差を感じたんは、本当にパワー持ってるやつが前におらんっていうこと」

 でも、(本来の実力で)力の差がこんだけあるとは思わんけど、差はあったと思う。

 この試合だけを見れば、だいぶ差があったよ。イラクに負けた時以上に差があった。完敗やね。板倉の調子が悪いどうこうじゃなく、そっちの方が問題じゃないの。トーナメントに出たところでどう戦うか。W杯で(世界のトップクラスと)戦うことを目指そうとしてるわけやから。

 差を感じたんは、本当にパワー持ってるやつが前におらんっていうことやね。核になるやつがおらんなっていう。

 中盤にはおるんよ。守田、遠藤と。守田みたいに推進力があって、体を張れるやつを使うのは良かったと思うけど。一番前(FW)におらんけえ。後ろには冨安がおるけど。あとはGKやな。鈴木はもっと良くなるっていうな感じはあったけど。前(FW)とGKのところが課題なんやろな。

 2列目も選手はたくさん使ったけど(こいつだというのは)おらんね。三笘も良かったのは(バーレーン戦で)相手が1個下のレベルだったし。真ん中(センターFW)におらんのが、あれ(課題)やな。岡崎とか大迫とか。ああいうやつ。それも超えるやつが出そうで、出んのよな。

 ただ、FWでそうなりそうな気配がある選手は一人おるんよ。

(第2回へ続く)

■久保 竜彦 / Tatsuhiko Kubo

 1976年6月18日生まれ。福岡・筑前町。筑陽学園高を経て、1995年に広島加入。森保監督(当時選手)とは7シーズンプレーした。2003年に横浜F・マリノスに移籍し、リーグ連覇に貢献。1998年に日本代表デビュー。ジーコジャパンとなった2003年以降は日本人離れした身体能力と強烈な左足でエースとして活躍したが、腰や膝など度重なる怪我により、2006年のW杯ドイツ大会は落選。以降、横浜FC、広島などを渡り歩き、2014年に引退。J1はリーグ戦通算276試合94得点。日本代表は国際Aマッチ通算32試合11得点。引退後は山口・光市に移り住み、コーヒー焙煎や塩作りなど、異色のセカンドキャリアを歩む。今月、初孫が誕生予定。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)