鹿島アントラーズは2023明治安田生命J1リーグの最終節で横浜FCと対戦し、2―1で勝利。最終順位を7位から5位に上げてフィニッシュした。試合後、鹿島の強化責任者である吉岡宗重フットボールダイレクター(FD)がメディアの取材に対応。今季のチームを総括した。

 今シーズン、岩政大樹監督のもと、7季ぶりの優勝を目指した鹿島だが、リーグ戦では5位に甘んじ、YBCルヴァンカップ、天皇杯も敗退。悔しい無冠に終わった。

 強化責任者を務める吉岡FDは、「僕らはタイトルを狙うクラブで、毎年ACLに出ないといけないクラブ。今年はまだまだ足りないところが多かったし、特に得点、攻撃の部分で課題が多かったシーズンだった」と1年を振り返り、「コーチングスタッフはよくやってくれた。岩政監督と話しながら、このメンバーでやれると思っていたし、彼の要望も踏まえながら動いていた。だけど、結果的にこういう順位に終わったということは、いろいろ考えなければならないことが多いし、タイトルを獲るという基準で考えると足りない部分があった」と総括した。

 今季の鹿島は、ボールを保持しても敵陣で崩しきれず、ゴール前での迫力不足が目立った。第28節横浜FM戦以降は、7試合でわずか5ゴール。チームトップの14ゴールを記録したFW鈴木優磨への依存度は高く、チームとしての得点力に大きな課題を抱えた。

 吉岡FDは、攻撃陣の編成について質問を受けると、「黒字経営しないといけないなかで、勝負に出るところは出ないといけない。そのバランスを考えて編成した。優磨以外の得点源は必要だと思っている。ただ、もちろん優磨以外のFWの選手に期待していた部分はあるし、組織として得点を取れる形をつくりたかった」と説明。そして、チーム全体の編成について、「予算はクラブによって違うが、他のクラブと比べると、鹿島はある程度使えるクラブだと思う。ただ、予算で一番になろうと思っているわけではない。与えられたバジェットのなかで、タイトルを獲ってきたのが鹿島。そういった歴史があるなか、強いチームをつくるのが、私の仕事。私は今年も良い選手たちが集まってくれたと思っている。まだまだ足りないところはあったかもしれないけど、彼らの力を発揮させてあげられなかったのは、私の責任だと思う」とコメントした。

 鹿島はクラブ史上初のACLのタイトルをもたらした大岩剛監督(現U―22日本代表監督)が退任して以降、ザーゴ監督、相馬直樹監督、レネ・ヴァイラー監督と、毎年のように指揮官が交代している。今季は岩政監督が1年を通して指揮を執ったが、チームスタイルを固められたとは言い難い。吉岡FDは、今季の方向性について、次のように振り返った。

「岩政監督には『方向性を示すが、ピッチの中で判断するのは選手たち』という考えがある。これはどの監督も同じだと思う。ただ、グループ戦術やセオリー、立ち返るものを、もっと強烈に出してよかったと思っている。結果的にこういう順位に終わったが、シーズンのはじめ、神戸に大敗したあと、岩政監督とずいぶん話をした。『自分たちがこうあるべきだ』、『こういうことをやろうとしているよね』と整理して、チームが少しずつ良くなってきた。横浜FM戦で勝てれば、また状況は変わってきたのかもしれないが、そのあと6試合勝てなくなり、立ち返る部分が見えづらかった。相手に合わせた部分も多かったので、自分たちのスタイルが明確にならなかったかなと思う。最後は彼ができるだけやりやすい形でやってもらった」

 チームスタイルが定着せず、毎年タイトル奪還を目標に掲げながら、5年連続の無冠。リーグ制覇は2016年から遠ざかっている状況だ。一部ではタイトル奪還から目標を下げる必要があるのではとの見方もある。しかし、吉岡FDはこの意見を真っ向から否定。あくまでタイトル奪還にこだわる必要があると強調した。