[画像] Amazonが規制当局と17州から独禁法違反で提訴される、「プロジェクト・ネッシー」なる謎の価格操作アルゴリズムの存在も明るみに



アメリカ連邦取引委員会(FTC)が2023年9月26日に、違法行為により競争を妨害し独占力を行使して価格をつり上げたとして、17の州の司法長官とともにAmazonを告訴したと発表しました。

FTC Sues Amazon for Illegally Maintaining Monopoly Power | Federal Trade Commission

https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2023/09/ftc-sues-amazon-illegally-maintaining-monopoly-power

Amazon responds to FTC antitrust lawsuit: Read our full statement

https://www.aboutamazon.com/news/company-news/amazon-ftc-antitrust-lawsuit-full-response

Amazon sued by FTC and 17 states over allegations it inflates online prices and overcharges sellers | AP News

https://apnews.com/article/amazon-ftc-lawsuit-antitrust-1b91bf8026cc3edf81e817cf8596c4bf

FTC targets alleged secret Amazon pricing algorithm 'Project Nessie' in antitrust complaint - GeekWire

https://www.geekwire.com/2023/ftc-targets-alleged-secret-amazon-pricing-algorithm-project-nessie-in-antitrust-complaint/

FTCは、Amazonが買い物客向けの「オンライン・スーパー市場」と、販売者が取引を行う「オンライン・マーケットプレイス・サービス市場」の2つで反競争的行為を行っていると主張しています。

まず消費者向けのサービスでは、販売者に制裁を科して他のネットサービスでAmazonより安い価格をつけられないようにしているとのこと。例えば、ある販売者が他の場所でAmazonより安く商品を提供しているのを発見すると、Amazonはその業者の商品を検索結果の下の方に追いやり、安い商品を消費者の目から遠ざけたとFTCは指摘しています。

またマーケットプレイスでは、Amazonの配送サービスを利用しなければ、Amazonでビジネスを行う際に事実上必須となる「Amazonプライム対象商品」の資格を取得できないようになっていることが問題視されました。これにより、出品者は「フルフィルメント by Amazon(FBA)」の利用を半ば強制される形となり、マーケットプレイスの出品者が他のプラットフォームで商品を販売するコストが大幅に高くなるため、競合サービスが著しく不利になっているとのことです。



訴状では他にも、Amazonが関連性の高い検索結果を表示する代わりに有料広告を掲載して顧客体験を損ねたり、高品質な他社製品より自社ブランドを優遇したり、販売者に高額な手数料を課したりしていることなどが非難されています。ある試算によると、販売者がAmazonに支払う手数料は2014年の19%、2020年の35%から、記事作成時点では総収益の50%近くまで増加しているとのこと。

FTCの訴状にはコネティカット州、デラウェア州、メイン州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ミシガン州、ミネソタ州、ニュージャージー州、ニューハンプシャー州、ニューメキシコ州、ネバダ州、ニューヨーク州、オクラホマ州、オレゴン州、ペンシルベニア州、ロードアイランド州、ウィスコンシン州の17の州の司法長官が名を連ねています。

また、FTCのリナ・M・カーン委員長は、ロースクール在学中に発表した論文「Amazon's Antitrust Paradox(アマゾンの反トラスト・パラドックス)」で名をはせた人物で、就任当初から反Amazonの旗手として有名だったため、今回の大型訴訟はカーン委員長のキャリアの大きな節目になるとされています。

カーン委員長は声明の中で、「私たちの訴状では、Amazonが独占的な力を悪用して自社を富ませる一方で、Amazonで買い物をする何千万もの家庭やAmazonに依存している何十万もの企業に対して価格をつり上げ、サービスを低下させていることを明らかにする訴えが記述されています。本日の訴訟は、Amazonのこうした独占的慣行の責任を追及し、失われた自由で公正な競争を元に戻すよう求めるものです」と話しました。



by E Gillet

一方Amazonは、FTCの訴訟により価格の上昇や配達の遅延が発生して消費者が不利益を被り、事業者らにも損害が出るとして反発しています。

Amazonの法務顧問を務めるデービッド・ザポルスキー氏は公式ブログで「FTCの提訴は、競争力のある価格だけを強調する当社の慣行と、他の小売業者が提示する低価格に合わせる当社の慣行が、何らかの形で価格の上昇につながると主張していますが、それは誤りです」「当社が販売者にFBAなどのオプションサービスの使用を何らかの形で強制しているというFTCの主張はまったく真実ではありません」と述べて、FTCの指摘を否定しました。

なお、FTCが提出した訴状の(PDFファイル)公開版では「プロジェクト・ネッシー」という言葉が16回記載されており、これによりAmazonの価格設定アルゴリズムが初めて公文書の中で言及されましたが、大部分が黒塗りになっているので詳細は不明です。



IT系ニュースサイトのGeekwireによると、「ネッシー」という言葉は2018年に公開されたAmazonのブログ記事にも登場しており、Amazonのシアトル本社の建物の名称として紹介されているほか、「Amazon.comのトレンドを監視するために使用されるシステム」であるとも説明されているとのこと。

Geekwireは「プロジェクト・ネッシー」について、「FTCの訴状では、黒く塗りつぶされたネッシーの説明の周囲に、Amazonが顧客に過剰な料金を請求しているという主張が含まれています」と指摘しました。