■アイドルのエンターテインメントとして、ダンス曲を取り入れる選択肢もあったが、5人はあえてその武器を封印。自分たちの声と楽器だけで勝負するセットリストを作り上げた!
ちょうど、1年前の2022年8月12日――。

関ジャニ∞は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』に向け、都内スタジオで最後のリハーサルを行っていた。そんな5人の元へ届いたのは、台風の影響で翌8月13日の公演が中止になったとの知らせ。悔しさをグッと胸の奥に押し込め、まさに彼らの想いを代弁するような楽曲「ふりむくわけにはいかないぜ」を、急遽インスタライブで届けた。

そのライブ内で、大倉忠義が「ポジティブに。未来にちゃんと繋げられるように」と語ったとおり、2023年の8月12日、1年越しのロッキンという未来に思いを繋げた。また、来年2024年に20周年を控える彼らは、今年『KANJANI∞ FESTIVAL SESSIONS 2023』と銘打ち、8月から9月にかけて3つの野外ステージに立つことが決まっている。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023』はその第一弾として、火蓋を切る大事な場でもあるのだ。

会場を訪れるロックファンの中には、テレビなどを通じて、関ジャニ∞がバンドとしても活動していることを知っている人も少なくないだろう。デビュー前から楽器を持ち始めた関ジャニ∞にとって、バンドで表現することは自然な流れだった。その熱はデビュー19年目を迎えた今も冷めることなく、実直に、貪欲に音楽と向き合い続けている。そんな彼らのアクトが、耳の肥えたロックファンの心をどう揺さぶるのか。

アイドルのエンターテインメントとして、ダンス曲を取り入れる選択肢もあったが、5人はあえてその武器を封印した。その上でオーディエンスとのコミュニケーションや、心の動きを明確にイメージしながら、自分たちの声と楽器だけで勝負するセットリストを作り上げた。丸山隆平いわく、「丸裸で勝負しようと思っている」と。そのハードルの高さを楽しみに変え、関ジャニ∞はステージへと向かった。

公演スタートは、17時55分。GRASS STAGE前にはエリアを仕切るフェンスの向こうまで人が溢れ、熱気に満ちていた。オーディエンスの期待値が高まるなか、メンバー5人が登場すると、大きな歓声と拍手が沸き起こる。メンバーは遥か向こうまで続く人波を眺め、「すげ~」と子どものような笑顔を見せた。横山裕の「ロッキン、会いたかったぞ~。この暑さ、吹き飛ばそうぜ!」という呼びかけと共に、疾走感溢れるバンドアレンジの「ズッコケ男道」で関ジャニ∞の夏が始まった。

大倉のドラムと丸山のベースが、アップテンポなリズムを心地よく刻むなか、安田章大がソロギターを力強く掻き鳴らし、横山がバッキングギターを重ねて厚みを出す。そして、鍵盤を弾きながら片手を空に掲げ、会場を盛り上げる村上信五。オープニングからギアを一気に上げると、4つ打ちのバスドラに合わせ、「無責任ヒーロー」のコールが始まった。「FIGHT!」「KANJANI!」「∞」「EIGHT!」と会場が一体となって声をあげ、クラップを鳴らす。初めて関ジャニ∞のライブを観る人々も、見よう見まねで一緒に手の振りを楽しむ。もはや、ここがアウェイであることを忘れるほどの光景だった。

2曲の代表曲に続いて披露された「未完成」は、丸山のロックなボーカルから始まる彼らの最新バンドナンバー。8ビートの骨太なサウンドに、観客もタテノリで体を揺らす。会場の熱さに呼応するように、5人の歌声もいっそう力強くなっていった。