今回は自分に対する評価についての考え方に関するアドバイスです(漫画:筆者作成)

「人事評価や査定に納得がいかない」と感じている人は、もしかしたら自分の仕事に対する姿勢や考え方に問題があるのかもしれません。著書に『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』などがある漫画家・イラストレーター・グラフィックデザイナーのJamさんが、自身の経験を基に解説します。

本当に「他人に認めてもらえない」から悩んでる?


(漫画:筆者作成)

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「自分はもっと評価されてもいいのでは?」

もし、職場の上司に目の敵にされているとか、パワハラやモラハラなどの問題があるとか、そういった特別な事情なしに正当な評価がされていないと思うなら、自己承認欲求が高くてそう感じている可能性があります。

承認欲求は2種類に分けられ、「他人から認められたい」と思う「他者承認欲求」と、「自分自身を価値ある存在として認めたい」と思う「自己承認欲求」があり、自己承認欲求が高い人の特徴をいくつか挙げると、まず、人の意見や話を聞かないことが多いです。

例えば、会議などで周りが賛同して決めたことでも、自分の基準で「違う」と思えばそれを認めることができません。自分の話や意見を聞いてもらえることで「自分は大切な存在だ」と自覚するので、関心の中心は自分で、他人の話には興味がないのです。

また、多くの人と関わりを持とうとしたり、「あなたもそう思うでしょう?」と、他人からの同意を求めたりしようとします。これは他人に興味があったり、他人から認めてもらいたいわけではなく、人間関係が豊かな自分という証拠がほしかったり、自分の正しさを他人に賛同されることで、自分が満足するためです。

そんな感じで「自分が認められない自分」を許すことができないから、途中で仕事や恋愛を投げ出すことがありません。一見すると頑張り屋で努力家の人が多いです。SNSでの特徴も挙げると、自慢や自撮りの投稿が多いなどの特徴があります。これは他人に認めてほしいからではなく、他人にうらやましがられることで、自分の満足感を満たすためです。

仕事での評価は「他人の評価」がすべて

自己承認欲求が高い人は、他者承認欲求が高い人のように「もっと他人に評価されたい」と悩むのではなく、「自分はもっと評価されるべきだ」と、自分が認められないことに納得がいかないのです。

自己承認欲求が高くなる原因として、周りの評価が気になったり、他人と比べて劣等感を感じたり、ほめられた経験の少ない人に、その傾向が強いといいます。周りの目を気にしているうちに、それが「自分自身をどう思うか」という気持ちにすり替わり、自分で自分を認めたい気持ちが強くなってしまうからです。

まず、これは大前提の話なのですが、仕事での評価というのは「他人の評価」がすべてです。人事評価や査定に不満がある場合、たいていは「自己評価」と「他人の評価」にズレがあります。

そして、他人と自分を比較して、自分のほうが勝っていたいという気持ちが言動に出てしまうと、チームワークなどで支障が出ます。人事評価の対象は成績や業績だけとは限りません。

人間関係がうまくいっているか、報告・連絡・相談ができているかなど、会社や上司の方針によりさまざまです。これは顧客相手の営業であっても同じなのですが、自分がうまく営業ができたと感じても、顧客からの評価が悪ければ、それが結果のすべてです。

何が言いたいかというと、雇用される仕事の場において、評価される側が自分で自分を評価している状態が問題なのです。仕事で評価される人というのは、自分の承認欲求を満たすことに執着する人ではなく、他人の欲求を満たすことができる人です。それが人間関係や信頼にも大きくつながります。

顧客や取引先の欲求を満たすことができれば、顧客は満足し、それが営業の成果や業績にも現れます。また、上司や会社が評価対象にしている行動をとれる人は、ちゃんと評価されて認めてもらえることでしょう。そこの認識がずれている限り、人事評価はずっと変わらないと思います。

まずは他人の仕事を観察してみる

もし自己承認欲求が強いと感じる、あるいは真剣に評価を上げる取り組みをしたいなら、まずは同じ社内で出世している人がどんなふうに仕事をしているかを観察してください。そして人の話をもっと聞いてみましょう。

周りや上司に相談してみるのはどうでしょう? その際は「どうすればもっとうまくいくと思いますか?」というように、アドバイスを求める感じで確認するのがいいと思います。「なぜ私は評価されないんですか?」と、自分の言いたいことや主張を押し付けてしまうと、せっかくの相談も、「面倒な奴だ」とマイナス印象になってしまうからです。

納得がいかない評価をされれば腹が立つし、ショックを受けたりもしますが、落ち着いて冷静に周りを観察して、会社や上司がどんな行動を評価対象にしているかを見つけてみてください。自己承認欲求が高い人は、進んで周りとの交流を取ることができたり、目標を高く設定して努力を続けることができたりと、メリットも多いのです。

うまくコントロールできれば、仕事の場ではとても強い武器にできると思います。他人の評価や言葉を受け入れ、誠実に謙虚に行動に反映していけば、人事評価も変わっていくと思います。

学生時代の評価基準を引きずっていない?


(漫画:筆者作成)

上司からの「人事評価」を素直に受け止められない人は、前項の自己承認欲求や他者承認欲求の話でも書きましたが、「自己評価」と「他者評価」にズレがあるからかもしれません。仕事の評価は「他者評価」が絶対であると認められなかったり、自分の価値を高く見積もりすぎたりしている可能性があります。

自己評価が高すぎると、認めてもらえない理由を自分ではなく、他人や他の原因のせいにして、「自分は正しい」という思い込みからなかなか抜け出せません。結果、上司には謙虚さや素直さがないと思われ、自分も相手の評価を素直に受け止められず、残念な結果となります。

もし悩んでいるのが新人なら、学生時代の評価基準を引きずったままという可能性もあります。学生時代の部活や成績には、ある程度の評価基準やルールがありますが、社会人のビジネスにおいては共通ルールや共通の正解がありません。その違いを意識するだけでも、だいぶ受け入れられるものは増えると思います。

また、自分の知識に自信がありすぎて、相手の評価を受け入れられない人もいます。でも、知識と能力は違います。知っていても実際に使えないなら仕事の場では役に立ちません。評価されていないということは、その職場で持っている知識を能力として使いこなせていないのです。

まずは、自己評価が正しくて他者評価が間違っているという感覚を変えないと、この溝はいつまでも埋まりません。

SNSやプライベートなら「他人の評価は気にしない」「自分を肯定することが大事」でいいのですが、仕事で業績を上げたいなら、他人の評価は絶対なのです。満足いく評価を受けるためには、会社や上司の評価基準を受け入れて、「これは仕事だ」と割り切ることも必要なのです。

無理な要望を聞けという意味ではない

最近は評価に納得できず、転職を繰り返したり、自立を考えたりする人もいますが、「仕事=他人の評価が絶対」という気持ちを忘れると、まずうまくいきません。アーティストなど、尖っていることや個性が売りの人でも、よほどの天才でない限り認めてもらうことは難しいでしょう。

間違っていることでも受け入れろとか、無理な要望でも言うことを聞けという意味ではありません。そういうものは毅然として跳ねのけていいと思います。ただ、会社員でもフリーランスでも起業した人でも、自己評価がすべてではなく、クライアントや顧客など相手の評価も受け入れることが大切だと意識するだけで、今までと状況は変わってくると思います。

(Jam : 漫画家・イラストレーター・ゲームグラフィックデザイナー)