ASUSのゲーミングPCブランド「ROG」の最新ゲーミングPC「ROG Flow Z13 GZ301」は、AAAタイトルを快適にプレイできる性能を備えつつ、ゲーミングPCとしては少数派の、デタッチャブル型2in1 PCスタイルを採用する点が大きな特徴となっている。
ASUS 「ROG Flow Z13 GZ301 GZ301VV-I9R4060」
デタッチャブル型2in1 PCに破格のスペックを凝縮
「ROG Flow Z13 GZ301 GZ301VV-I9R4060」(以下、GZ301)は、従来モデルから搭載するプロセッサやディスクリートGPU(dGPU)を強化したモデルだ。最大の特徴となるのが、従来モデル同様に、ゲーミングPCとしては少数派のデタッチャブル型2in1スタイルを採用しつつ、そこにゲーミングPCとして申し分ないスペックを凝縮している点だ。
以下にGZ301の主なスペックをまとめているが、それを見るとわかるようにプロセッサにCore i9-13900H、dGPUにGeForce RTX 4060 Laptop(ビデオメモリ8GB)を採用し、メモリは16GB、内蔵ストレージは容量1TBのPCIe 4.0×4 SSDと、一般的なクラムシェルスタイルのモバイルゲーミングPCと比較してもまったく劣る部分がない。
かといって、ボディサイズは302×206×14.3mmとなかなかのコンパクトさだ。一般的な13型クラスのタブレットPCと比較するとさすがに厚みはあるものの、それでも特別大きいわけではない。
それに対し本体重量は公称約1.2kgと、こちらはやや重い印象。このあたりは、プロセッサやdGPU用の高性能な冷却システムを搭載することによる、大きな重量増があると考えていい。そして、着脱式キーボードは重量が約350gなので、双方を加えると重量は約1.55kgとなる。デタッチャブル型2in1 PCとしてはなかなかの重さで、実際に手に持ってみてもずっしり重く、重量1kg前後のモバイルノートPC同等の軽快さはない。
それでも、同等スペックのクラムシェル型モバイルゲーミングPCと比べるとそこまで重いわけではなく、高性能PCを比較的軽快に持ち歩きたいという人には十分魅力的だろう。
本体正面
下部側面
左側面
上部側面
右側面
背面
着脱式キーボードを装着した状態
本体のみの実測の重量は1,202g。タブレットPCとしてはやや重い印象
着脱式キーボードを装着した状態での実測の重量は1,556gだった
背面のキックスタンドは無段階に角度調節が可能
デタッチャブル型2in1スタイルということで、GZ301には背面に本体を自立させるキックスタンドが備わっている。
キックスタンドの仕様は、一般的なデタッチャブル型2in1 PCに搭載されているものとほぼ同じだ。スタンドを開いて本体を自立させられるのはもちろん、無段階の角度調節が可能で、クラムシェル型ノートPCのディスプレイ同様に、自分の利用スタイルに合わせて任意の角度調節が可能。
また、スタンドは最大で160度ほどまで開くため、水平に近い角度まで開いて利用可能だ。後ほど紹介するようにGZ301のディスプレイはタッチ操作やオプションのスタイラスペン「ASUS Pen」にも対応しており、非常に深い角度までディスプレイを倒して利用できる点は便利に感じる。
本体背面にキックスタンドを備え、本体のみで自立可能
キックスタンドは任意の角度に調節可能
キックスタンドは160度ほどまで開くので、ペン入力時などに便利だ
165Hz駆動の13.4型WQHGAタッチ液晶を搭載
ディスプレイは表示解像度が2,560×1,600ドット、アスペクト比16:10の13.4型液晶を採用している。パネルの種類はIPSで、視野角は申し分のない広さを確保。ゲーミングPCのディスプレイで重要なポイントとなるリフレッシュレートは最大165Hz対応となっており、こちらも十分満足できる仕様となっている。
また、発色性能はDCI-P3カバー率100%と、こちらも申し分ないものだ。ゲーム映像を鮮やかに表示できるのはもちろん、写真や動画なども本来の色をしっかり表現できるため、映像クリエイターも満足できる発色性能を備えていると言える。
そして、デタッチャブル型2in1ということで、ディスプレイはタッチ操作とスタイラスペンに対応。スタイラスペンは、4,096段階の筆圧感知に対応するオプションの「ASUS Pen」が利用可能だ。
ゲーミングPCにとってタッチ操作やペンへの対応は必須というわけではないが、ウィンドウ操作やメニュー操作など、タッチで直感的に操作できるため、操作性を大きく高めてくれるだろう。同時に、クリエイティブな用途への活用の幅も拡がることになる。映像クリエイターが、作業用PCとして高性能なゲーミングPCを利用することも少なくないが、このディスプレイの仕様であればGZ301も十分選択肢として入ってくるはずだ。
2,560×1,600ドット表示対応の13.4型液晶を搭載。最大165Hzの高リフレッシュレート表示やタッチ操作、オプションのASUS Penを利用したペン入力にも対応
DCI-P3カバー率100%の広色域表示に対応し、写真や動画も鮮やかに表示できる
着脱式キーボードの操作性は標準的
GZ301の着脱式キーボードは、仕様としては標準的。アイソレーションタイプの日本語キーボードで、主要キーのキーピッチは約19mm、ストロークは約1.5mm。ゲーミングPCのキーボードということで、Nキーロールオーバーにもしっかり対応している。また、フルカラーLEDバックライトも搭載し、本体背面のLEDイルミネーションと合わせて鮮やかなライティングを楽しめる。もちろん白など単色での発光も設定できるので、ビジネスでの利用も不安はない。
キーボード手前のタッチパッドはクリックボタン一体型。縦の幅がやや狭い印象もあるが、利便性はそこまで悪くない。GZ301はディスプレイがタッチ操作に対応していることもあり、双方を併用すれば十分快適な操作が可能という印象だ。
ただし、キーボード自体は英語キーボードをベースとして日本語化していることもあって、一部キーはもとのキーを分割して搭載している。コスト的な問題もあるとは思うが、できればきちんとした日本語キーボードを実現してもらいたい。
同時に、着脱式キーボードということで、どうしても剛性は劣るため、ゲームプレイの快適性という点では外付けキーボードやクラムシェル型ノートPCのキーボードにはかなわない印象だ。とはいえ、本気でゲームプレイを行う場合には専用のキーボードを利用する場合が多く、この着脱式キーボードは普段使い用などとして割り切るのであれば、大きな不満は感じないだろう。
着脱式キーボードは英語キーボードをベースに日本語化したもの。剛性はクラムシェル型ノートPCのキーボードに劣るものの、利便性や打鍵感は着脱式キーボードとして標準的だ
主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保しているが、一部キーは元のキーを分割して搭載するなど残念な部分もある
フルカラーLEDバックライトを搭載しており、鮮やかなライティングが可能
バックライトの発色や発光パターンはオリジナルアプリ「Armoury Create」で設定できる
本体背面にもイルミネーションがあり、キーボードバックライトと合わせたライティングが可能
クリックボタン一体型タッチパッドの利便性も標準的だ
キーボードカバーは角度を付けて利用することも可能
外付けGPUボックス「ROG XG Mobile」が利用可能
ポート類は、左側面にThunderbolt 4×1と、USB 3.2 Gen2 Type-C×1、右側面にUSB 3.2 Gen1 Type-A×1と3.5mmオーディオジャック、背面キックスタンド内にmicroSDカードスロットを備える。拡張性は、デタッチャブル型2in1 PCとしてはまずまず標準的ではあるが、1点他にはない特徴がある。それは、ROGブランドの外付けVGAボックス「ROG XG Mobile」用の接続インターフェイスを備えるという点だ。
ROG XG Mobileには、より上位のdGPUが搭載されており、GZ301に接続することで描画性能をさらに引き上げられる。ROG XG Mobileの最新モデルではdGPUとしてGeForce RTX 4090 Laptopを採用。ROG XG Mobileを接続することで本体内蔵のdGPUよりも高い描画性能を実現でき、より高いレベルでのゲーム体験が可能となる。
ROG XG MobileとGZ301は専用コネクタを利用し、PCIe 3.0x8、帯域幅63Gbpsで接続される。GeForce RTX 4090 Laptopは、本来はPCIe 4.0x16接続対応で、その場合の帯域幅は256Gbpsとなるため、ROG XG Mobileでは本体の性能をフルに発揮させることはできないが、それでもdGPU自体の性能が大きく優れるため、内蔵dGPU利用時より描画性能が高まることが十分期待できる。
なお、ROG XG Mobile専用コネクタはUSB Type-Cと兼用のため、ROG XG Mobile接続時にはUSB Type-Cは利用できなくなる。
左側面にはThunderbolt 4とUSB 3.2 Gen2 Type-C、USB Type-Cと排他で利用するROG XG Mobile専用コネクタを配置
右側面にUSB 3.2 Gen1 Type-Aと3.5mmオーディオジャックを配置
GZ301で利用できる、外付けVGAボックス「ROG XG Mobile」
ROG XG Mobileは、このように接続して利用する。ROG XG Mobile側に外部ディスプレイを接続して利用することも可能。GZ301への電力供給も可能だ
この他、GZ301の拡張性の特徴としては、キックスタンド内の蓋を開けることで、内蔵ストレージのSSDモジュールに容易にアクセスできるという点がある。搭載できるSSDはM.2 2230と小型のものとなるため選択肢はそれほど多くないものの、容易にアクセスし交換できるという点は心強い。
無線機能は、Wi-Fi 6E(IEEE 082.11ax)準拠無線LANとBluetooth 5.1を標準搭載。生体認証機能は、Windows Hello対応の顔認証カメラと指紋認証センサーを搭載。指紋認証センサーは右側面の電源ボタン一体型となる。カメラは、インカメラが503万画素、アウトカメラが1,258万画素。
付属のACアダプタは、USB Type-C接続で出力は最大130W。出力が大きいためサイズはやや大きく重量もあり、付属電源ケーブル込みでの重量は実測で481gだった。本体や着脱式キーボードと同時に持ち歩くとすると総重量は2kgを超えてしまう計算だが、高性能なプロセッサやdGPUを搭載するゲーミングPCを安定動作させることを考えるとしかたがないだろう。
microSDカードスロットはキックスタンド内部に配置
同じくキックスタンド内の蓋を開けることで、内蔵ストレージのSSDへ容易にアクセス可能だ
物理ボタンはボリュームボタンと電源ボタンを用意し、電源ボタンは指紋認証センサー一体型となる
インカメラは503万画素で、顔認証カメラとしても利用可能
アウトカメラは1,258万画素
付属のACアダプタは出力130Wで、やや大型だ
電源ケーブル込みの重量は実測で481gだった
性能はさすがのひと言で、高負荷時の静かさも嬉しい
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。なお、ベンチマークテスト実行時にはプロセッサおよびdGPUのパフォーマンスを最大限引き出せるよう、オリジナルアプリ「Armoury Create」で動作設定を「Turbo」に設定している。
ベンチマークは、「Armoury Create」で動作設定を「Turbo」に設定して実行した
まずPCMark 10の結果だが、スペック通りの高スコアが得られている。一般的な2in1 PCやクラムシェル型モバイルノートPCを大きく凌駕するスコアなのはもちろん、ゲーミングノートPCとしても申し分ないスコアだ。これはプロセッサやdGPUの冷却もしっかりできている証拠でもあり、さすがといった印象だ。
PCMark 10の結果。スペックを反映した高スコアが得られており、満足できる結果と言える
続いてプロセッサの処理能力を計測するCINEBENCH R23の結果だ。こちらもCore i9-13900Hの処理能力を十分に引き出していると言っていいスコアが得られている。PCMark 10の結果と合わせて、ゲームだけでなく動画編集をはじめとしたクリエイティブ用途にも十分活躍してくれそうだ。
CINEBENCH R23の結果。こちらもプロセッサの性能を十分引き出したスコアが得られており、処理の重い作業も快適にこなせそうだ
次は3DMarkの結果だ。今回はTime Spy、Speed Way、Port Royalの3種類を計測してみた。結果を見ると、こちらもほぼスペック相応のスコアが得られている。単体でのゲーミングPCとしてはスペックはハイエンドというわけではないため、飛び抜けたスコアとなっているわけではないが、AAAタイトルも描画設定を工夫することで十分快適にプレイできそうだ。
Time Spyの結果
Speed Wayの結果
Port Royalの結果。いずれのテストもスペック相応のスコアが得られている。描画設定によってはAAAタイトルも十分快適にプレイできそう
最後にゲームタイトルのベンチマークテストの結果だ。今回は「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」と「BLUE PROTOCOLベンチマーク」。いずれも最高画質設定でテストを行った。
結果を見ると、FF XIVは「非常に快適」、BLUE PROTOCOLは「とても快適」だった。この2つのタイトルに関しては、画質設定を高めに設定しても十分快適にプレイできるだろう。これなら、最新のAAAタイトルもまずまず快適にプレイできそうだ。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークの結果。このスコアなら不満なくプレイできるだろう
BLUE PROTOCOLベンチマークの結果。こちらも画質設定を最高にしても問題なくプレイできそうだ
また、今回はGeForce RTX 4090 Laptop搭載のROG XG Mobileも試用できたので、そちらを接続した場合の結果も紹介しておく。テストを行ったのは、3DMarkの3種類とファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク、BLUE PROTOCOLベンチマークで、結果は以下にまとめたとおりだ。
BLUE PROTOCOLベンチマークに関してはフルHDでのテストとなったため、スコアが跳ね上がっているが、それを加味してもやはりROG XG Mobileの威力は絶大だ。どのテストも大幅にスコアが伸びており、これなら外付けの4Kディスプレイを接続しても快適なゲームプレイが望めるだろう。自宅ではROG XG Mobileを接続して最強の環境を整え、外出時にはGZ301のみを持ち出す、という使い方も非常に魅力的だ。
Time Spyの結果
Speed Wayの結果
Port Royalの結果
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークの結果
BLUE PROTOCOLベンチマークの結果
ところで、ベンチマークテスト実行中に冷却ファンの動作音もチェックしたが、これが想像以上に静かだった。
ゲーミングPCでは高負荷時に爆音がする製品も少なくない中、GZ301はフルパワーで動作していても比較的静かなファンの動作音や風切り音が聞こえるだけだ。これで本当に大丈夫かと心配になるほどだが、テスト結果を見ると全く問題ないため、静音性のために冷却性能を犠牲にしているとうこともない。しかも、低負荷時にはほぼ無音に近い静かさだ。これもGZ301の魅力のひとつと言っていいだろう。
高性能なゲーミングPCを気楽に持ち運んで使いたい人にピッタリ
今回見てきたように、GZ301はゲーミングPCとしては少数派のデタッチャブル型2in1スタイルではあるが、その中身は本格的なゲーミングPCであり、非常に良くまとまった製品であることがわかる。
重量がやや重かったり、キーボードの利便性がクラムシェル型PCに劣るなど、一部気になる点もあるが、それを差し引いても完成度は非常に高いと言える。また、優れた性能に加えて、タッチやスタイラスペンに対応するなど、クリエイティブ用途にも問題なく対応できる。
そのため、十分な性能を備え手軽に持ち運べるゲーミングPCを探しているひとはもちろん、クリエイティブ用途に活用するコンパクトで軽量なモバイルPCを探している人にお勧めしたい。
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