――インディーズからメジャーに移ったからといって、特に音楽性が変わったような印象は受けていないのですが、周囲で変わったと感じることはありますか?

ヒダカ:伝達速度が速くなりましたよね、非常に。インディーズって伝達速度が遅い分、1回気に入られれば、より強固な絆になりますよね。例えば、Hi-STANDARDでパンクに入ってきた人達は多分、未だにハートに熱いパンク魂を残すんでしょうけど、多分メジャーではそれを出来ないんですよね、即効性のモノだから。だけど、逆にこっちも即効性のモノだって分かって楽しめば、それは別に弊害ではないんじゃないかって。もう30代前半、中盤、後半のメンバー達なので(笑)、メジャーとの契約が切れた時に、別にそこでアタフタはしない。音楽関係の別の仕事に就くとか、全然音楽と関係ない仕事をするとか。そこに対する恐怖は無いですからね。元々、お面だから、大して面割れもしてないし(笑)。

――今回の新曲の着うたが100万ダウンロードを達成したら、お面を取るというのは本当なんですか?

ヒダカ:取りますよ、全然。「俺達はミリオン売れたらお面を取る」って、ずっと言ってましたので。どうせ売れないんでね(笑)。それぐらいで売れたら苦労しないですよ、この世のミュージシャン達みんな。

――インディーズで何万〜何十万枚と売り上げるアーティストもいれば、一方でメジャーで活動していても数千〜1万枚売れればいいというような、一部ではメジャーとインディーズの立場が逆転している状況がここ10年くらい続いてますよね。いち音楽ファンとして見ている分には面白くもありつつも、実際にその中に身を置かれる側として、不条理を感じることはないですか?

クボタ:まぁ、自分で言っちゃうのもなんですけど、変わった点というのは、伝達性が早くなって色んな人に間口は広がったけど、「音楽の本質がちゃんと伝わるかどうか?」という危険性も増えましたね。インディーズの時って、リスナーが自分で探していて辿り着くから、差別するわけじゃないですけど多分、聴き込み方も深いと思うし。ただ、今は「何々で見た」とか、例えば「主題歌をやっているから」というだけで買ってくれるけど、そこから先にどれくらい辿り着くかっていうのは、かなり確率が低くなっているような気はする。その危険性はあるから、そこをなんとか「深く聴いてもらえるようにやっていかなきゃな」と思っています。

――インディーズのビジュアル系バンドなどで、コアなファンがある意味「自分達が育てた」みたいな、ちょっとした所有意識を抱いてしまって、メジャーに行って手の届かない存在になると「音楽性が変わった」というのを理由に離れてしまうこともありますが。

ヒダカ:意図的にセルアウトしてみたんですけどね、なんか、あまりそういう風に映らないんですよね、うちの場合。

――えぇっ!?本当は変えてたんですか?

ヒダカ:いや、「セルアウトぐらい言われても全然いいかな」ぐらいのつもりでやってるんですけど、やっぱりあまり変わらないので(笑)。やってる俺達も特にそんな感じも無いので。

――実際にインタビューする側としては、今までと変わったことなどを質問するのが仕事だったりもするのですが、新曲を聴かせてもらっても、今回の曲だから特に何かが変わった、みたいなものは感じなくて。

ヒダカ:むしろ、昔に戻ったぐらいの勢いですね。

――あれっ!?インディーズのデビュー曲じゃん、みたいな。

ヒダカ:インディーズ時代の曲がふんだんに入ってますからね(笑)。