[画像] 荒れる「3歳マイル王決定戦」NHKマイルCで2歳王者ドルチェモアの巻き返しはあるのか?

 3歳馬の「マイル王決定戦」GINHKマイルC(東京・芝1600m)は荒れる。

 現に過去10年の結果を振り返ってみれば、3連単はすべて万馬券。しかも、10万円を超える高額配当が7度もあって、そのうち2回が100万円超えとなっている。

 距離適性がいまだ定まらない3歳春の戦いとあって、出走馬はマイル中心に戦ってきた馬にとどまらず、スプリント路線や、GI皐月賞(中山・芝2000m)出走組など、いわゆるクラシック王道路線からの参戦もある。ゆえに、力関係の比較が非常に難しい。これが、一番の荒れる要因だろう。

 そして今年のレース(5月7日)でも、そうした事情は変わらない。加えて、本命候補と見られていた馬が直前のトライアルでコケたことで、一段と波乱ムードが増している。

「コケた」本命候補とは、ドルチェモア(牡3歳)。昨年末のGI朝日杯フューチュリティS(12月18日/阪神・芝1600m)を制して、2022年JRA賞の最優秀2歳牡馬に輝いた馬だ。

 2歳時の成績は3戦3勝。新馬戦を勝ったあと、GIIIサウジアラビアロイヤルC(10月8日/東京・芝1600m)を快勝し、先に触れたように朝日杯FSで戴冠と遂げた。

 先行して直線で抜け出すというレースぶりは安定感抜群。クラシックには向かわず、3歳春の大目標をNHKマイルCに据えた時から、その舞台で中心になるのは「この馬」と見ていた関係者やファンも少なくなかったに違いない。

 したがって、およそ4カ月の休養明けで挑んだ前走のGIIニュージーランドトロフィー(4月8日/中山・芝1600m)では、単勝1.7倍という断然の支持を集めた。

 ところが、である。終わってみれば、掲示板にも載らない7着と大きく期待を裏切った。

 スタートよくハナに立ち、道中はリズムよく運んでいた。直線を迎えて後続を引き離しにかかり、そこから強さを発揮するのがドルチェモアだが、この時は違った。直線半ばで他馬に競りかけられると、あっさりとかわされてズルズルと後退。結局、勝ち馬からは3馬身以上も引き離された。

 この"背信"の凡走を、どう理解すればいいのか。関西の競馬専門紙記者はこんな見解を示す。

「GI馬で、最優秀2歳牡馬と言えば、すごく強い馬という印象がありますが、実際はそれほどでもなかった。そのことが図らずも証明された、ということでしょう」


朝日杯FSを制して2歳王者に輝いたドルチェモアだが...

 同記者がその根拠とするのは、この馬が勝った朝日杯FSのレベルにある。同レースで7着だったオオバンブルマイ(牡3歳)がのちにGIIIアーリントンC(4月15日/阪神・芝1600m)を勝っているものの、これは例外中の例外と思えるほど、朝日杯FSで上位にきた面々のその後の成績は惨憺たるもの。

 僅差の2着だったダノンタッチダウン(牡3歳)は皐月賞(4月16日)で最下位の18着と惨敗し、同じく3着と奮闘したレイベリングもGIII共同通信杯(2月12日/東京・芝1800m)で9着と完敗した。これらに続く4着、5着馬も、その後に挑んだ重賞でことごとく掲示板を外す敗戦を喫している。

 それが朝日杯FSのレースレベルを表しているとすれば、勝ったドルチェモアは「相手に恵まれた」イコール「そんなに強くはない」という見方は成り立つ。先の専門紙記者の言い分も、もっともである。

 前走のニュージーランドTについては、「休み明けでテンションが高かった」とか「スタートがよすぎて、立ちたくないハナに立ってしまった」など、いくつか敗因が挙げられている。だが、そもそもの実力に疑問符がつく。とすれば、本番へ向けて上積みがあったとしても、巻き返すのは「厳しいでしょう」(専門紙記者)。

 そうは言っても、ドルチェモアが好走する可能性がまったくないわけではない。何より、トライアルと言いながらニュージーランドTの舞台は中山・芝1600m。東京・芝1600mが舞台の本番とはコース形態がまったく異なるからだ。

 以前から「ニュージーランドTとNHKマイルCは関連性が薄い」とよく言われている。事実、ニュージーランドTで強い勝ち方をした馬がNHKマイルCで馬群に沈んだり、逆にニュージーランドTでさっぱりだった馬が本番で台頭したり、という例が過去には数多く見られる。

 ましてや、ドルチェモアは東京が舞台だったサウジアラビアRCで強い競馬をして勝っている。東京コースに適性があるのは明らかで、一変の可能性は十分にある。ここに、わずかな活路を見出せるかもしれない。先述の専門紙記者もこう語る。

「今までどおりの競馬では、巻き返しは厳しいでしょう。ただし、強気に前へ行って、後続になし崩し的に脚を使わせる競馬ができて、そのペースにドルチェモアがハマれば、わずかながらチャンスはあるかもしれません」

 いずれにしても、2歳王者ドルチェモアの能力に疑問符がついたことで、今年のNHKマイルCは本命不在の大混戦となった。

 今年もまた、荒れそうである。